【Reina's eye:クリスマスイヴは突然に・・・】

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産科病棟の皆さんに認められることも嬉しいけれど やっぱり今、隣にいるこの人に パートナーだって認められることが一番嬉しい 「そんな伶菜と一緒にいられる今があるのは、親父とお袋のおかげです。」 『・・・・・・・・・』 「本当にありがとうございます。」 『・・・・・・・・・』 「まだまだ力は及びませんが・・あなた方の娘さんを一生大切にすることを誓います。」 「・・・・・・・・・」 「だからこれからもずっと俺達を見守っていて下さい。」 私を腕の中に抱いたまま耳元で天国にいる両親に語りかける彼の声。 それは仕事場で聴く“締まりのある声”ではなく、 私だけが知っている素を隠そうとしない穏やかな声だった。 感動で今にもまた泣いてしまいそうな私に 「あと、伶菜にもちゃんと言っておかなきゃな。」 そう言いながら、ナオフミさんは私を包んでいた彼の腕の力を緩め、その手で私の体をゆっくりと反転させた。 何をちゃんと言ってくれるの? まさか衝撃の真実とかじゃないよね? “やっぱり自分はお前の実兄だった”とか “隠し子がいる”とか・・・ 何かいいことを思いつかなくて ついギュッと目を閉じて肩を竦めてしまった。 「そんなに構えるなって。」 『でも・・・』 「さっき、言おうとしていたら、横やりが入ってしまったからな。」 『さっき?』 「ああ。」 さっきって、病室にいた時のことかな? 「病室で話していたことの続き、まだ言ってなかったからな。」 ついさっきまでふたりっきりでいた特別個室でのこと 私が彼のネクタイを締めてあげた際に突然振ってきた彼からの甘いキスの後 彼が私に語りかけてくれた幾つかの“ありがとう” “生と死の境から還ってきてくれてありがとう” “生きることを諦めないでくれてありがとう” “十数年を経て俺の前に現れてくれてありがとう” その後、ナオフミさんはまだ何か私に言おうとしていた中で 彼の院内PHSが鳴ってしまったせいで 彼が言おうとしていたことが聴けていなかったっけ 先に言ってくれていた彼からの“ありがとう”達で 私はすっかりお腹いっぱいになっていたから 今の今まで、彼の言葉の続きのことを忘れていた
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