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どうやら到着したのは、病棟建屋の1階ロビー。
そこには果物の籠盛を手にした見舞い客らしき人達や職員数人がエレベーターの到着を待っていた様子。
その人達の目の前に突如出没したウエディングドレス姿+お姫様抱っこ状態の私とナオフミさん。
その人達に私達はどうやら急患を思われたらしく、特に声をかけられることなく遠巻きに凝視されていた。
そんな周囲の異変に気付いたのか、警備員さんが駆け足気味にこっちへ近付いてきた。
「ご苦労様です。救急科はこちらです・・。」
「あ~急患じゃないですから。それじゃ。」
尋常ではないこちらの事情に配慮くれたのか、警備員さんは慌てることなくスマートに案内してくれようとしていたのに。
それを無用とするナオフミさんは会釈をして彼とすれ違おうとした。
その時だった。
「それでも、多分騒ぎになりますから、こちらへ。」
そこは院内の異変をあらかじめ予測する任務を果たそうとする警備員さん。
「まあ、彼女がこんな格好しているので、ビックリされるとは思いますが、大した騒ぎにはなりませんよ。」
警備員さんの促しもどこ吹く風。
伶菜は俺のものアピールをしたいらしいナオフミさんは病院玄関のほうへ向かおうとしたその時、
「お待ち下さい!!!!!伶菜先生のこの格好でも騒ぎになりますが、日詠先生が彼女を抱きかかえている姿でも充分騒ぎになりますから。」
警備員さんの毅然とした態度にさすがのナオフミさんも立ち止まった。
病院職員として、病院玄関で騒ぎを起こそうとしていたことに対して、この後、こってりと警備員さんに叱られるだろうと私はヒヤヒヤ。
それなのにナオフミさんは
「えっ?なぜ、僕達をご存知なんですか?」
どこか間の抜けた質問を警備員さんに投げかけている。
私と同様にナオフミさんの質問によって力が抜けた様子の警備員さん。
その証拠に彼はふっと笑いをこぼした。
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