第1話 束縛男と私のユリ

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*** 晩ご飯を外で済ませて自宅に帰り着いたのは、午後9時23分。 「ただいま」 誰も「おかえり」なんて言わないのだけれど、この習慣は実家で暮らしていた頃から抜けていない。 「先にお風呂入るよ」 私の家をすっかり自分の家と化してしまっている弘志がそう言ってそそくさとお風呂場に向かった。 私は部屋に入り、今日一日中見られなかったスマホを手に取る。 そうしてロックを解除した、その時だった。 「え、何これ……?」 目に飛び込んできたのは、おびただしい数の電話やLINEの通知。 電話、31件。 LINE、10通。 どちらも5歳年下の妹、桃子からだった。 15:21 着信あり 15:26 着信あり 15:34 着信あり 15:45 着信あり 16:01 着信あり 16:13 着信あり 数分刻みでかかっている電話。 それが17:56まで続いている……。 17時台といえば、ちょうど弘志と公園で話をしていた時間帯だ。 私はたくさんの着信の中で、留守電が入っていたのは始めの15:21と、17:56。 私はスマホを恐る恐る耳に当てて、再生ボタンを押した。
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