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15:21
『も、もしもし、お姉ちゃん……? お母さんが……! お母さんがトラックにはねられて、大変なことになったのっ。今すぐ××病院に来て……!!』
「な、なによそれ……?」
スマホの向こうから聞こえてくる妹の声が、不安に震えていて、今にも泣き出しそうだ。
「どういうことよ……っ」
ドクドクと、心臓が脈打つ音が、自分でもはっきりと聞こえて来た。
部屋の外からは、弘志がシャワーを浴びる音が、無責任なほど大きく響いている。
私は怖かった。
もう一つの17:56の留守電を開くのがとても怖い。
でも、聞かなくちゃいけない。
妹が31回も私に電話をして、最後に伝えたかったことを、しっかりと耳に焼き付けなくては。
震える指を必死にコントロールしながら、私は意を決して留守電再生のボタンに触れた。
17:56
『お姉ちゃん、ねえ、どうして来なかったの……? 電話に出てくれなかったの……? お母さんが、死んじゃったよっ』
ガンと、頭をハンマーか何かで殴られたような衝撃が、走った。
「うそでしょ……?」
死んじゃったんだよ。
スマホを耳から話して、再び脳内で再生された妹の嗚咽まじりの言葉に、私は吐きそうになって胸を押さえた。
呆然自失のまま、LINEを開く。
これもまた妹からのメッセージだった。
電話と同じような内容の言葉たちが、次々と目に飛び込んできて、半ばパニック状態に陥る。
最後の言葉は、17:35に送られて来た「もう間に合わないっ」というもの……。
「うぅっ」
何がなんだか分からなくて、その場に崩れ落ちる。ガクンと床で膝を打った時、もうこのまま立てないような気がした。
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