第3話 浮気男と冬のバラード

11/35
前へ
/83ページ
次へ
私たちは喫茶店に入ると、適当にドリンクを注文した。 私はそこに、たまごサンドウィッチを追加する。 「友貴人は何も食べないの?」 「うん、ちょっとお腹空いてなくて」 「そうなの……」 やっぱり今日の友貴人は変だ。いつもなら多少お腹が空いていなくても、私に合わせて何か注文するのが普通だったから。 私はなんだか一人だけ食事をする後ろめたさを感じながら、注文したドリンクとサンドウィッチを店員さんから受け取った。 二人掛けの空いている席を探して徐に座る。 友貴人はホットティーを、私はサンドウィッチを齧り、ホットコーヒーを啜る。 「今日さ、昼間にLINEが来たからびっくりしたわ。菜々子に——、あ、菜々子っていうのは私の部署の後輩なんだけど、彼女にからかわれたわ」 なんとかその場の空気を和ませようと、私は今日の昼間に菜々子とした話を彼にしてみる。 「昨日のプレゼントのネックレス、本当はつけてきたかったんだけど、ルビーだからちょっと目立つかなと思って。次回遊びに行くとき絶対つけていくわ」 昨日の今日で、誕生日にもらった大事なプレゼントのことも話した。 もらった時、どれだけ嬉しかったか。 肌身離さずつけていたいぐらい大切に思っているということ。 そして何より、物よりも自分の誕生日に時間を使ってくれたこと。 何年経っても変わらずに祝ってくれる友貴人に、私はずっと変わらず感謝し続けていると。 今日はなんだか調子の悪そうな彼だけれど、普段は口にしない素直な言葉をかけたら、いつも通りの彼に戻ってくれるかもしれない。 私が好きで、私を好きな彼に、戻ってくれると思った。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加