第3話 浮気男と冬のバラード

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とにかく私は必死で走った。走って走って元来た道を戻り、電車に乗って放心状態のまま自宅の最寄駅まで揺られていた。電車から降りたあとは、もう走る気力すらなくて、行き場をなくした迷い犬のようにふらふらと歩いた。 彼のことなど考えたくないのに、凍えるような寒さに胸が疼くのが腹立たしい。 そのうちはらはらと雪が降ってきて、より一層苦しくなる。 だって雪はいつだって、名前に“冬”をもつ親友と、“ゆき”のある彼を思い出させるものだから。 「友貴人……」 友貴人、友貴人、友貴人。 私から、もう奪わないで。 あなた自身と、冬子を、奪わないで。
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