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「寒い〜」
側に誰もいないのに、口から漏れ出てしまう心の声を止める方法があるなら誰か教えて欲しい。
午後19時23分。
日はとっくに暮れている上に昼間から考えてもかなり気温が下がっている。
約束の桜南公園で、こうして一時間近く待っている。
でも、彼が現れる気配は一向にない。
そもそもあれは“約束”になっていなかったから仕方がないのかもしれない。
私が一方的に取り付けた約束だ。約束というよりはもはや脅迫だった。
「友貴人……」
でも、それでも少しだけ期待していた。
彼がここに来てくれるんじゃないかって思ってた。
だって昨日、彼は私に電話をかけてきてくれたんだもの。このままずっと縁を切ることだってできたのに、わざわざ私に教えてくれたのだ。自分が病気であることを———。
「病気……?」
私は、肝心なことを忘れていたのではないか。
彼は、病気なのだ。
それが本当なら、こんな酷なことはない。
どの程度病気が進行しているのかは分からないけれど、少なくとも彼にとって、私のやり方が合っていなかったのではないか。
だとしたら、彼はもう———。
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