会いたい

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「なぁ、健人。俺達がこじれたのはお互い言葉が足りなかったせいだと思うんだ。俺はお前に美咲のこと説明が足りなかった。で、健人は俺に訊けば良かったんだ。『俺のことどう思ってるのか』って」  確かにお互い、コミュニケーション不足だったとは思う。あんなに気になっていたのだから、「美咲がいるくせに俺を抱くなんてどういうことだ」と本音を稜にぶつけたら良かったのだろう。それなのに健人は黙っていなくなることしか出来なかった。 「だから、本音を言えよ。言って欲しい。健人は俺のこと、好き?」  ニヤつきながら言うこいつは、もっともらしいことを言って結局「好き」と言わせたいだけの確信犯だ。 「俺は、健人のこと大好きだよ。好きすぎてヤバいと自分でも呆れてる。お前に逃げられて、着信拒否られた俺はどうしたと思う?」 「知るか」  確かに気になっていた。聞きたい。教えてほしい。 「俺、大学卒業してもずっとお前と一緒にいられると信じ切ってたからさ、お前が突然消えてかなりショックで、頭おかしくなったんだ」  稜はあの日を思い出したのか、また涙で目を潤わせている。 「お前のいない世界なんてどーでもいいわと思って、お前の住んでたマンションのベランダから飛び降りて死んでやろうと思った」  思わず稜の腕を掴んでしまった。なんだその短絡的な思考は。やばすぎるだろ。病むほど俺が好きだったなんて信じられない。 「でもベランダに出て、やっぱりやめた。俺が死んだらお前に迷惑かかると思ったから」  飛び降りるのも、やめるのも理由は全部俺か?! 「でも良かったよ、生きてて。いなくなったはずのお前がこうして俺に会いに来てくれたんだから」 「……バカ」  簡単に死のうとする奴なんてバカだ。 「だよな。でももう俺の前から突然消えるのはやめてくれ。お前に捨てられたらマジで死ぬほど辛い……」  健人は頷いた。 「俺も頑張るから。お前に捨てられないよう最高の彼氏になるよ」  何言ってんだ。稜はほぼ完璧だろ。 「だから、健人。俺と付き合ってくれ。俺の恋人になってくれないか? 擬似恋人はもういない。正真正銘、たったひとりだけの俺の恋人になってほしい」  嘘みたいだ。まさかこんなことを稜に言ってもらえる日がくるなんて。  稜の言葉が嬉しくて、つい稜に抱きついてしまった。 「健人。ちゃんと言お? なんで今、俺に抱きついたんだよ……」  稜も健人を抱き締め、やさしく健人の背中を撫でている。  ——好きだから。  その一言が小っ恥ずかしくて出てこない。そういえば意地っ張りの健人は、一度も稜に言葉にして「好き」と言ったことはないかもしれない。 「俺は好きだよ。ずっと二人で一緒にいよう、健人」  稜は健人にキスをした。 「大学卒業したら、一緒に暮らそう」  稜はまた健人にキスをする。 「健人は?」  今度は長い長いディープキス。懐かしい。思い出した。これは健人の一番幸せな時だ。 「どう思ってる?」 「……えっ……んっ……!」  稜はさらに健人の口腔内をむさぼってくる。健人の髪を両手で掻き乱して、稜は必死で健人を求める獣みたいだ。  ちょっと待て。  これじゃ答える隙がない。  お前に「好き」だって言えないよ……。  稜、お前がいつも俺の話を聞かずにがっつくのが悪かったんじゃないのか。  すべての元凶は性欲バカなお前の堪え性のなさじゃないか!? おい!!!
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