番外編『稜の誕生日〜やっぱりツンがデレる話〜』

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 3月18日。今日は稜の誕生日だ。  けれど、稜と会う約束はしていない。  稜に誕生日に会えるかどうかを訊かれて、健人は「就職先の新人研修があって、会えるかどうかわからない」と答えてある。  本当は研修はないし、朝から稜の誕生日を祝うための準備をするつもりなのだが、そのことは稜には内緒だ。  稜は、昼間アルバイトがあると言っていた。だから家に帰ってくるのは夕方になるはずだ。  今日の午前中には稜へのプレゼントが宅配便で届く。それを受け取ったあと、合鍵は持っているからプレゼントを持って稜の家に行き、サプライズディナーとして手作りケーキと料理を用意する手筈だ。  健人は稜にプレゼントなんてしたこともないし、手料理を振る舞ったこともない。きっと稜はこのサプライズを喜んでくれるのではないかと健人は密かに期待している。  ピンポーン。  健人は玄関に急ぐ。てっきり待ち望んでいたものが届いたとばかり思っていたのに、ただの書留めだった。  もうすぐ12時になるのにおかしいな、と購入履歴を確認して青ざめた。  今日発送となっており、届くのが翌日以降になるようだ。 「やっべぇ!」  これは確認ミスだ。ギリギリ間に合うと思って注文したのに、『5営業日で発送』の日数を数え間違いしたようだった。  誕生日にプレゼントがないなんて最悪だ。けれどプレゼントはすでに購入済みで、今から他のものを買う予算も時間もない。  ——稜に、プレゼントは明日渡すからって、言うしかないか……。  その代わり、手紙を書くことにした。何もないのでは格好がつかないから、とりあえず手紙を先に渡しておく作戦に切り替えた。
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