番外編『稜の誕生日〜やっぱりツンがデレる話〜』

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「俺、やっぱ健人のこと大好きだ」  稜に優しい瞳で見つめられ、ふんわりと髪を撫でられる。  その瞳にドキドキする。稜は顔がよすぎるから見つめられたときの破壊力が半端ない。 「俺、全部わかったから。健人は十分頑張っただろ? だから片付けは俺がやる」 「な、何がわかったんだよ……」 「お前が何をしようとしたか、だよ」 「えっ……?」  そうだった。稜はいつだって健人の行動をめざとく見抜いてくるタイプの男だ。 「普段料理なんてしないくせに、俺のために手作り料理を披露しようとしてくれたんだろ?」 「いや違うって! 俺が腹が減っただけ!」 「いいからいいからわかってるって。お前がどれだけ苦戦して作ってくれたのか、このキッチンを見ればわかるから」  さすが稜だ。素直になれない健人が言えないことも全部汲みとってわかってくれて、それを労ってくれる。  健人はウルっとくる目尻を、稜にバレないようにサッと拭った。 「健人が俺んちに勝手に来てくれたことなんて初めてだよな? いっつも合鍵渡した甲斐がないって思ってたんだよ。お前に会えないと思ってたのに、こうやってサプライズで部屋にいてくれるのすげぇ嬉しい。こんなことしてくれたの、今日が俺の誕生日だからだろ?」 「違ぇよ! たまたま通りかかっただけ! プレゼントも用意してないし……」 「俺にとっては誕生日に健人に会えたことが最高のプレゼントだ。しかも彼シャツ着て、シャンプーのいい匂いさせて、まさかお前、俺を誘ってんの?」 「違くてっ! 服汚して借りただけだ……んんっ……!」  稜に再び唇を奪われ、今度は口内まで犯される。同時に身体をエロい手つきで弄られるから、だんだんと健人の気持ちが高ぶってくる。 「健人、このまま抱いていい?」 「なっ……!」 「お前、ベッドの上だと素直になるからさ。聞かせて、お前の本音」  性急すぎやしないか、と思うが、今日は稜の誕生日だ。誕生日くらいは稜の好きにさせてやりたい。 「べっ、別にいいけど……」 「いいの!?」 「今日だけ、と、特別だからな……」  それに本音を言うと、健人もキスだけじゃ足りない。もっと稜を感じたいな、と思っている。 「なんなの? 今日の健人、めちゃくちゃ可愛い……」  稜に再びキスをされる。本当に稜は顔をみればキスを仕掛けてくるから、実はこいつはキス魔なんじゃないかと心配になる。  腕を引かれて連行され、稜の部屋のベッドの上に突き飛ばされた。 「おいっ! 突き飛ばすことないだろっ……」  健人が文句を言ってやろうと思い、稜を振り返った途端、上から稜が覆い被さってきた。 「ごめん。好き。大好き」  稜にキスをされ、好きと言われて何も言えなくなる。 「今日は研修で会えないって聞かされてたのにさ、健人に会えて、こんな最高のサプライズされて、すっごく嬉しいよ」 「いや、だから俺は何も……プレゼントだって、俺のミスで間に合わなくて明日になっちゃったし——」 「大丈夫。プレゼントなんてなくてもいい。健人がいれば他に何もいらないよ」 「料理だってめちゃくちゃで、ケーキもできなかったし——」 「何も問題ない。どんな味でも形でも健人の愛情が詰まった料理なら涙が出るくらいに美味しいに決まってる」 「お前、いつも家をキレイにしてるのに、俺がめちゃくちゃに汚しちゃったしさ——」 「そんなの構わない。俺のものは健人のものだって思ってくれていいから」  稜はベッドの上で健人の身体をぎゅっと抱き締める。
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