さよなら、稜

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「まっ……待てよ。俺、お前とそんなことっ……!」  こんなのダメだ。稜にはちゃんとした彼女がいる。頭ではわかっているのに、Tシャツをめくられ侵入してきた稜の艶かしい手に身体は正直にビクッと反応を示してしまう。  稜は健人の身体を(もてあそ)ぶ。乳首をいじられて思わず「あっ……」と声が出てしまったときなんて顔から火が出そうなくらいに恥ずかしくなった。 「健人。俺もう限界っ……。お前が欲しくて我慢できないんだよっ……!」  そのまま稜に押し倒される。やばい。抵抗しなきゃと思っているのに、上から稜にのしかかられ、ベッドにくくりつけるよう両手を稜に押さえつけられ、思うように動けない。 「稜っ……! ふざけっ……てめぇ!」  身体が動かないなら言葉での抗議だ。彼女がいるくせに「お前が好き」とかなんなんだ?! 稜のことは好きだ。でも、こんな関係、許されるわけがないだろ。 「離せっ……! ……んんっ……!」  突然唇を当てがわられ、口を塞がれる。  さらには稜に何度もキスをされ、恍惚感で頭がぼうっとしてきた。  ——ダメだってわかってるのに……。  きっと飲み過ぎたせいだ。アルコールのせいで酔ってまともな判断ができなくなっているんだ。  ずっと稜に片想いをしていた。そんな憧れの人に「好きだ」と言われて、何度もキスをされる。それはずっと健人が望んでいたことだ。心も身体も乱暴にこじ開けられ、理性とは裏腹に健人はこのまま稜に溺れてしまいたいと思っている。  稜が健人の口の中に人差し指を突っ込んできた。口をこじ開けるようにしたまま稜は唇を重ねてくる。指を引き抜いたあと、今度は稜の舌が健人の口腔内を蹂躙し始めた。  不思議だ。口は性器でもないのに、稜の荒々しいディープキスはとろけてしまいそうなくらいに気持ちいい。  ああ、もう……。気持ちよくなってきた……。  次第に抵抗を忘れ、稜から与えられる刺激に敏感になっていく。  稜からの止まないキス。唇が腫れぼったくなっているのか、ジンジン熱をもっている。  稜は健人の抵抗が弱くなったことに気付いたのか、健人を拘束していた手を離し、唇は繋げたまま、健人の身体に指を這わせて、皮膚の感触を堪能するよう撫で回す。 「……んっ、はぁ……」  稜のキスに呼吸を忘れて窒息しそうになり、必死で息をする。  健人の身体を這いまわる稜の手は、次第に身体の下の部分に降下していき、やがてズボンの上から健人のモノに触れた。  その瞬間ドキッとする。なぜならそれは、稜から与えられたキスと少しの愛撫だけで既に昂ってしまっていたからだ。  そんなことを稜に知られたくない。まるで稜のことを好きだと言ってるみたいで恥ずかしい。どんなに稜に惹かれようとも、ずっとこの気持ちは隠してきたのに。
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