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思えばあれが最大の過ちだったんだな——。
一度そういう関係になった後は、稜と健人はなし崩し的にセフレのような関係にもつれこんでしまった。
いつ稜の彼女にバレるのかヒヤヒヤしながらも、全くバレることもなくここまで来てしまった。
健人の部屋で朝まで過ごした後、稜は「今日はこれから美咲と会ってくる。なんか俺に紹介したい人がいるんだと」と言って彼女である美咲に会いにいく。
一体どういう神経でそんなことができるのか、と同じ穴のムジナのくせに健人は思っていたが、責めたらきっと稜はもう健人に会ってくれなくなるのではないかと何も言えずにいた。
そんな不毛な関係も今日で終わりだ。
もちろん美咲に悪いという気持ちもある。
そして健人自身がもうこんな関係に耐えられなくなっていた。
健人は本気で稜を好きだった。
身体の関係だけじゃ心は満たされない。
寂しい、愛して欲しいと思いながらも口に出せないことに鬱々としていた。
その全てを投げ出して、自由になりたかった。
これ以上稜とこんな関係を続けてはいけない。覚悟が鈍らないように、新しい引っ越し先は稜には教えない。大学四年の秋になり、最近は大学に行く回数も減っている。このまま卒業してしまえばいい——。
合鍵を使って入ったら、がらんどうになっている空っぽの部屋。それを見た稜はどう思うだろうか。
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