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健人がカフェでのアルバイトを終え、帰宅しようとした時に、出口でそれを待っていた人物がいる。
美咲だった。
美咲の顔はミスコン候補者リストで見たことがあるし、何より見間違えようもないくらいの突出した美人だ。
でも健人は美咲と友人でもなければ一度も話したこともない。
「健人くん、だよね……?」
美咲はおずおずと話しかけてきた。
「そうだけど。なんでここに……?」
美咲が健人のバイト先まで把握していることに驚きだ。稜から聞いたのだろうか。
「ちょっと二人で話がしたいんだけど……いいかな?」
健人はわけもわからないまま、わざわざやってきた美咲を邪険にも出来ずに「いいよ」と頷いた。
美咲と二人、深夜の街を歩いている。
「あのね。私もうすぐ結婚するの」
「知ってる。噂で聞いた」
「そうなんだ。早いね噂って」
大学内での有名人、美咲に関する噂はまたたく間に共有されていくのだろう。
「それって全部、稜のお陰なんだ。私、稜には本当に感謝してるの」
どういう意味だ? 稜がキレイさっぱり別れてくれたから……?
「健人くん、稜から聞いてないの? 私達の関係」
「何のことだ……? 俺は、稜と美咲ちゃんはずっと恋人同士だと思ってたけど……」
健人の反応を見て、美咲は「やっぱり」と声を漏らした。
「稜は健人くんにも話さなかったんだね……。健人くんなら話してくれて良かったのに、稜はホントに律儀なんだから……」
さっきから美咲の話が全く見えてこない。二人は恋人同士じゃなかったのか……? いや、でも大学で二人は公認のカップルで、二人手を繋いだり、腕を組んで歩いているところを皆、目撃している。間違えないようのない事実のはずだ。
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