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巨人と共に脱出を試み数年後、一行は幸運なことに生命の存在する星を見つけることができた。 そこはまだ文明は存在しておらず、生き物たちが弱肉強食の元自由に暮らしていた。
「天都ー! 行こうぜ」
「あぁ!」
星へ来た当初は色々と大変だった。 星が変われば生態系から何から全てが違う。 食べられるものを探すのも、持ち込んだ作物を育てたりするのも今までとは変わる。
ただ元々の巨人の星とそう距離が離れていなかったため、星の最期の時まで色々と物資を運ぶことができた。
「オーグさん、よろしくお願いします!」
『二人共、気を付けて』
巨人との意思疎通は博士が作った翻訳機で行っている。 元々博士が巨人との関係を良好に築いていたことから、4人共打ち解けるのは早かった。 今は狩りの時間。
恐竜のように大きな蛇のような動物を狩る。 天都と行定は司令官としての役割、実行は巨人たちだ。
大木をそのまま削り出したこん棒がジャイアントスネークもどき(行定命名)の胴体に直撃し、なぎ倒された木々と共に獲物は動かなくなった。
「うっひょー、本当に仲間でよかったと思うぜ!」
「俺たちは何もしていないもんな」
狩りを終えた天都たちは佳与と恵人と待ち合わせしている場所へと向かった。
「あ、天都! 行定ー!」
「おぉ! 凄い料理の量だな!?」
「昨日から佳与ちゃんと他の巨人さんたちと一緒に頑張って作ったの。 あとはお肉を入れれば完成なんだけど・・・」
「俺たちも蛇獲ってきたぜ!」
「えぇ、また蛇なの・・・」
「いいじゃん、美味いんだから!」
「そりゃあ、味は美味しいけど・・・」
年月が経っても恵人は蛇を食べることに抵抗があるらしい。 もっとも天都でさえ最初は躊躇いたくなった程。 地球の蛇とは違い目が6つも8つもあれば理解できるというものだ。
「遅いよー、天都! 巨人さんたち、どんどん捌いて入れてって!」
『了解、姉御!』
佳与は宇宙へ出て随分と逞しく成長した。 恐らくは4人の中で一番巨人たちとの環境に順応している。 料理が完成すると盛大に食卓を囲む。
来た当初は自然ばかりだったが、今は建造物が構築されているのだ。 といっても、ビル等は無理で原始的な住宅レベルではあるが。
「よーし、できた! それじゃあ、みんなで運ぼう!」
巨人たちの運搬力に比べると地球人組は明らかに貧弱だ。 ただ自分たちの分は自分たちで、そのルールの元やっているのが功を奏しているらしい。
巨人たちを単純な労働力と扱わず、対等な関係を築いている。 もっとも巨人たちがその気になれば地球人組は為すすべなくやられてしまうだろう。 食事が終わると巨人が天都と行定を肩に乗せてくれた。
そのまま外へと行き畑を見せてくれる。
「おぉ! 立派に育ってんじゃん!!」
巨人の星で育っていた作物は移住先でもその特性を落とさなかった。 地球人からしてみれば作物一つで一年分にもなる程の大きさ。
それを育てるのは巨人ではないと不可能なためそちらを担当してもらい、料理の技術や味付けなどは天都たちが担当している。
「ここの星も最初は何もなかったのに立派になったな」
「あぁ。 この異空間には生命を観測できるところが他にもあったなんてな」
地球にいた頃は他に生命を観測できる星はなかった。 だがこの異空間には他にもいくつか生命のいそうな星があることが既に分かっている。
「地球には結局戻る方法は見つからなかったけど、新たな人生としてこれも悪くないかもな」
「でも今頃騒ぎになっているよなー・・・。 残してきた家族もそうだし、ロケット発射は周知していたんだし」
「いつか帰れる方法が見つかるといいんだけど、博士もまだその手掛かりは掴めていないってな。 てか、俺たちを連れてきたみたいなことはできたりするのかな?」
「それができたとして、意味がなければただ拉致にしかならないって」
「そりゃあ、そうか」
二人は現状ではまだ一つしかない大型施設へ戻る。 巨人と地球人がともに生活できるよう、複合的に作られていた。 もっともエリアで別れていて、動線が交わらないようにはなっている。
「おぉ。 君たちも来ておったのか」
「博士!」
「私一人では何もできなかった。 君たちには感謝しかない」
「そんなことないです。 結果的に地球にいた頃には考えることもできないようないい経験ができました」
「そう言ってくれると助かる。 君たちは皆将来有望じゃ」
「ありがとうございます。 俺たちでできることはまだまだある。 全ての可能性を信じ新しい道を切り開いて俺たちは進んでいくだけです。 俺たちに不可能なことなんてきっとありません!!」
-END-
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