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ロケットの組み立てに着手していた手を止め、行定は首を捻る。
「地球人の技術?」
「そうだ。 気が付かなかったか? 巨人の文明もそうだけど、この空間も明らかに地球の影響を受けている。 つまり俺たち以外にもこの星に辿り着いた人間がいる」
「なッ・・・!」
もしこの星独自に文明が発達したのだとしたら、ここまで地球の影響を受けているはずがない。 それに全ての物が巨人用に作られているとするには、大きさが合わない気がしていた。
閉じ込められた瓶は天都たちにとっては巨大だったが、巨人からしてみれば指の先程の大きさしかないのだ。
「そう言えば、アタシたちはどうしてこの星にやってきたんだろう?」
「ロケットに何かがぶつかってからおかしくなったよ?」
「もしかしたらその時に捕獲されたのか・・・」
そこで天都が言う。
「だけどよく考えてみるとおかしくないか? 俺たちのロケットはたかだか月にも行けない程の航行距離しかなかったんだ。 当然だけどそんな地球近辺に巨人の星なんてあるわけがない。
ということは・・・」
「ということは?」
「もしかしたら瞬間移動のような技術で連れ去られたのかと思ったんだけど・・・」
天都の言葉に行定が言う。
「あれ、でも瞬間移動って今の時代になっても不可能って結論付けられていなかったっけ?」
「そうなんだよな。 巨人の文明が進んでいるのかもしれないけど、この暮らしぶりを見ていると俺たちより進んだ文明レベルとは思えない」
「ちょっといいか?」
「ん? どうした、行定」
「いや。 もしかしたらなんだけど、俺たちがいた世界とは別の世界に来ているとかじゃないよな?」
「・・・はぁ? 別の世界って、そんな・・・」
行定の言葉に皆の表情が沈む。 もしそれが真実なら元の世界へ戻る方法に見当がつかない。 更に言うならロケットもまだバラバラでエネルギーも尽きている。 だが天都だけは諦めていなかった。
「この世界へ来ることになったっていうことは、俺たちの世界へ行く方法もあるっていうことじゃないか? まだ絶望するのは早い」
その言葉に佳与は明るい笑顔を返す。
「た、確かにそうだね! じゃあまずはここから脱出しないと! でも、ロケットは動かないんだよね?」
「あぁ、言っていなかったけど、ロケットが制御不能に陥った時、緊急ボタンを押して機体を守ったんだ」
「それでエネルギー残量が0なのかよ! なんてことをしてくれたんだ・・・ッ!!」
怒る行定に佳与が言う。
「ちょっと行定! もしそうしなかったらロケットに穴が開いて宇宙に放り出されていたかもしれないんだよ!?」
「あ、そうか・・・。 悪い、天都」
佳与の言葉を聞き、行定が身震いして縮こまった。
「いや、いいよ。 俺もその時の行動が本当に正解だったのか今でも分からないんだ。
もし連れてこられたとしたらロケットにダメージを与えるはずがないし、ボタンを押していなかったら、すぐにでもロケットを飛び立たせることができたのかもしれないんだから」
恵人が言う。
「過ぎたことを言ってもしょうがないよ! それよりどうやって抜け出す?」
その時佳与が辺りを見ながら首を傾げ始めた。
「どうした?」
「あぁ、いやね。 アタシも子供の頃はこんな人形用の家を持っていたんだけどさ」
「え、そうなの? 佳与ちゃんって可愛い趣味していたんだね!」
「馬鹿ッ! 子供の頃だって言ってるじゃん! 今はぬいぐるみ一つも置いていないから!!」
「私は結構持っているけどなぁ」
「へぇ、そうなの? 恵人もこんなミニチュアハウスみたいなの持っていたんだ?」
「ううん、ぬいぐるみだけ。 ミニチュアハウスって結構高いでしょ? だから買ってもらえなくて持っていなかったの」
「待った。 どうして急にその話を?」
行定が口を挟む。
「あー、ごめんごめん! 男子たち二人は分からないかもしれないけどさ。 ミニチュアハウスってもっと一目見てオモチャって分かる作りをしているんだよ。
でもあそこに生えている木とか地面とか完全に本物でしょ? そこに違和感っていうか・・・」
そこまで言われて天都も閃いた。
「これは本物だよ! 生えている草からも生命を感じられる、紛れもない本物だ!!」
「本物!?」
「この何もかも巨大な星で考えるとそれは有り得ないことだ。 つまりこのサイズで発展している場所がどこかにある!」
「た、確かに・・・」
「そこを探し出せば元の世界へ帰れるかもしれないっていうこと?」
「あぁ。 その可能性は高い」
「でもどうやって探し出すの?」
三人が考えていると黙っていた行定が名案を思い付いたように言う。
「なぁ、この場所って本物なんだろ? それって本当に実在する街を持ってきたっていうことになるわけだよな?」
「あぁ、そうだと思う」
「ならエネルギーになるものだってあるんじゃないか? だって本物なんだから」
「おぉ・・・ッ!」
「行定がまともなことを言った・・・」
「馬鹿野郎ッ! 俺はいつだってまともだよ!!」
4人の行動するべきことは分かった。 注意深く観察し巨人が近くにはいないことも分かった。 もちろんそれがいつまで続くかは分からない。
―――巨人の目的は相変わらず分からないけどな。
―――宇宙船の技術を知ってどうしようと考えていたんだ?
もしかしたらと考えていたがミニチュアの街に他に人がいたりすることはなかった。 ただ生命が全くいないというわけではなく、小さな動物の姿を極まれに見ることができたのだ。 恵人が言う。
「これ古い灯油っぽいのがあったけど使える?」
「あぁ。 エネルギー変換器は無事だから燃料になるものなら何でも使えるよ」
「本当? よかった! 車とかもあるからもしかしたらガソリンとかももらえるかも!」
「おぉ、それは有力だな」
こうして4人は旅立つ準備をしていくのだ。
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