9.火照る頬

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9.火照る頬

すうっと風が吹いて、火照った頬をかすめていく。隣に座る浅井は鉢巻を結び直しながら、少し照れ臭そうにこう言った。 「篁くんのこと、一年のころには意識してたんだ」 キスを終えたあとに、お互いに思いを告げた。俺は浅井がそんな気持ちを持っていたとは気づいていなかったから、驚いた。 それで、いつから俺のことを?と聞いた。 「外部入学の、賢い奴がいるって噂になってたときに。その時はクラスが違ってたから、わざわざ見に行ってさ。そしたら背の高い、かっこいい篁くんがいて」 「…かっこいい?」 「うん。一目惚れ」 てへへと鼻の頭を触る浅井。 「だけど、同じクラスになっても接点なかったし…まあ諦めるよね。そしたら、篁くんが木曜日たまに早いことに気がついたんだ。庭を見てる時にね。ラッキーって思ったら、話しかけてくれて。だんだん話をしてるうちにやっぱり好きだなあって思ってだんだけど」 鉢巻を結び終えて、浅井はジッとこちらを見た。 「もしかしたら篁くんがだんだんと僕のことを意識してくれてるのかもって、思ってた」 「何だよ、バレてたのか」 「あんまり自信はなかったけどね」  そう笑う浅井の顔は赤くなっていた。 校庭から大きな声援が飛び交う。そろそろ次の競技だ。俺は立ち上がると浅井に手を伸ばした。 「ん」 その手を、浅井は嬉しそうに掴んで立ち上がった。立ち上がった勢いで、俺の頬にキスをする。俺は驚いて、思わずキスされた頬に手を当てた。 「じゃあまたあとでね!」 そう言うと走って、校庭に向かった。俺より少し長く見える鉢巻をヒラヒラさせながら。 参ったなあ、と思いながら頬が赤くなっているのが分かる。ホワホワと気持ちが暖かくなっていることも。  ただ同時にその温かな気持ちに墨がジワジワと広がるみたいに不安な気持ちが広がっていく。 それは槇とのことだ。もう決着をつけないと。 こんな状況で、浅井と恋愛はできない。 俺は唇を強く噛んだ。 *** 翌週の木曜日は【朝会】の日。俺は覚悟を決めていた。だがディスカッション中に、槇の方から突然こう言ってきた。 「朝会、今日でおしまいにしようと思うんだ」 俺は思わずノートから目を離し、槇を見る。眼鏡を外して、瞼を押さえながら槇は続けた。 「大きなイベントももうないし、執行部のミーティングだけですむ。受験もあるし、篁くんも忙しいだろう?」 瞼を押さえていた指を外して、俺の手を握る。ゾワッと寒気がした。 「朝から付き合ってくれて、ありがとうな」 「…ああ」 「それでさ」 ぐっと手を握る力が強くなる。俺は嫌な予感がして、手を退けようとしたが動かない。 「今日が最後なら、もっと触れてもいい?」
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