プロローグ。

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その疑念、疑惑は伝染し、何時しか村人達は私を厄介な存在へと認識を改めた。 それでも私は、動物達を愛し、村の子供達と遊ぶよりも山に出掛ける日々を過ごした。 当然、そんな日々を送るものだから親兄妹からも非難を受け始めるが、私はどうしてもそれを止める事をしなかった。 そして、その私の行動がいよいよ災厄と成ってリオナ村に降り注いだと村人達は騒ぐ。 その理由、それはドラゴンだ。 赤黒き鱗に覆われ、両翼を拡げれば30メートルにはなるのではないか?と思われるほどの体躯。 その屈強な牙は全てを噛み砕き、その鋭利な爪は全てを引き裂き、その隆々なる足は全てを踏み潰す。 この世界の絶望が、大空から舞い降りたのだ。 村人達は大いなるドラゴンを前にして、瞬時に理解した。 あぁ、やはりミリアは巫女だった。最悪を齎す悪しき存在だったのだと。 ドラゴンはリオナ村中央に布陣すると、咆哮をあげる。 ドラゴンは炎を吐くとも言われており、村ごと人間を焼き尽くすつもりなのだと誰もがそう思った――その刹那。 「あのぉ~すみません」 何処からともなく、声が聴こえる。 「あのぉ~聞こえてますよね?」 この声は一体? 人の声量にしては大きく、また、重々しさを感じもする。 「はぁ……無視は傷付くなぁ」 村人達は顔を見合わせ、その声の主かもしれない者に返答を試みようとする。 でも、誰が? あんな脅威なる存在、絶対的なる絶望に声を掛ける等という愚行をする者など死にに行く様な物だ。 であるからこそ、その重責は自然とこの村の責任者でもある村長へと委ねられたのだ。
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