614人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
そう言いながら壮太はマグカップに淹れたコーヒーを両手に持ち、私がいるソファーに向ってくると一つ私に手渡した。
「ありがとうございます」
私が受け取ると壮太が何食わぬ顔で隣に座ったので私は一人分開けるように座り直す。
「どうした?」
「何もないとは言え、距離を保っていた方がいいかと思いまして」
「何もない、ねぇ」
壮太はソファーの前にあるローテーブルにコトンと音を鳴らしながらマグカップを置くとずずずっと私に向ってきた。
「な、なんですか?」
「亜衣さんって天然? それとも養殖?」
私は魚か!
「人間です」
彼は笑いながら私が持っているマグカップを掴み取るとテーブルの上に置いて再び私を見つめた。
「なんとも思ってない女を利益なしで助けるような男じゃないよ、俺」
何が言いたいのだろうか。
「慰謝料の一部を払えってことですか?」
「金は要らない」
徐々に近づいてくる彼は私を見下ろすように覆いかぶさる。
「な、何が欲しいんですか?」
「そんなの俺が言わないと分からないの?」
お金以外の利益……。
彼はひじ掛けに手をつき、私を逃がさないようにする。まっすぐに見下ろされると体が硬直する。逃げられない。
「俺の寝間着きて、ノーブラでパンツは男物」
彼はにっこり微笑む。
最初のコメントを投稿しよう!