真っ赤な嘘のクリスマス

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「だって、これ、婚姻届けですよ」 「だから?」  あれから今日まで一緒に暮らしていたが、私と壮太の関係は何も進展していない。むしろ後退したくらいだった。私が疑心暗鬼になってからは見つめ合う時間も無くなったし、食卓を共にすることもなかった。 「てか、いきなりすぎます」 「いきなりじゃない。プロポーズしただろう」 「でも、あれは」 「亜衣さんは危なっかしすぎる。また変な男に捕まる前に俺に捕まっておけ」 「壮太さんこそが変な男です」 「はぁ? 好きな女と屋根の下に二人きりってのに手を出せないのが男にとってどれだけ拷問か知ってるか?」 「知りませんよ。」 「スイカを尻の穴に入れられるほどの辛さだぞ」  何を出産の辛さのように言ってくれているのだ。鼻の穴と尻の穴の違いはよくわからないが、出産の方が辛いはず。どちらも経験したことないけど。 「正直俺、何でこんなに亜衣さんのことを好きなのか分からない」  それを私に言われても……。 「でも、手放したくない。だからどうする? 結婚するか? 付き合うか?」  どうするも何もどっちもほぼ同じじゃないか。 「謎の男とは結婚もお付き合いもできません」  私は笑いながら体をクルっと反転し、出口に向かう。 「謎の男じゃなかったら結婚するんだな?」
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