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後ろから声が聞こえてくるが私は足を緩めずに突き進む。
「東雲 壮太33歳。独身。結婚歴なし、隠し子含め子供なし」
何を大きな声で言っているのだろうか。恥ずかしい。
私は外に出て駐車場に向かう。
「東雲Eatery代表取締役社長。あのバーは俺の店」
私は思わず足を止めた。東雲Eateryは私が在宅で事務をしている会社だ。
なんで今まで会社のことを調べなかったのだろうか。いや、調べる必要が無かったのだ。壮太から会社情報を貰っていたから。
(そういえばあれには社長名、東雲文太って書かれてたな。微妙に細工してたのか)
壮太は私の前に回り込みにっこり笑う。
「変な客が多いから治安維持のために俺自ら監視してたってわけ。亜衣さんの旦那……じゃなくて元旦那は要注意人物で報告が上がってきた」
「じゃあ、ジムが同じって」
「ごめん。嘘。俺が後から入った」
人を簡単に信じるものじゃない。
「でも、俺が亜衣さんを好きだって言うのは本当」
「これだけ沢山嘘つかれていたら信じるものも信じられません」
壮太はしまったと言わんばかりの表情を浮かべた。
「ごめん。言いそびれたって言うか、言わなくても亜衣さんは大丈夫かなって思ってて」
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