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「じゃあなんで今更言ったんですか?」
「言ったら結婚してくれるかな、と」
彼は苦笑いして頭をかいている。反省しているようには見えない。
「しませんよ」
「なんでだよ」
「そんなハイスペックな人と結婚できるわけないじゃないですか」
「できるよ」
「イヤです。どうせ奴隷とかただで働く家政婦とかにしたいだけでしょう」
「俺を何だと思ってんだ?」
壮太は私の腕を掴み引き寄せると腰に手を回した。
「俺が亜衣さんの奴隷」
「な、何言ってるんですか? それに私奴隷なんていらないです」
ってか、顔が近い。
「俺はただ、亜衣さんの側で一緒に笑ったり怒ったりしたいだけ」
「そんなこと言われても……」
「とりあえず、キスしていい?」
壮太は私の答えも聞かないまま顔を更に近づけてくる。
壮太を好きなのは変わっていない。彼を信じて良かったと思う。
沢山嘘をつかれていたけれど、これからは私がその嘘を見抜けるようにすればいいだけ。
私は目をつぶり、彼のキスを受け入れる。
彼が東雲Eateryの社長だってことも嘘かもしれない。結婚歴もあって、隠し子がいるかもしれない。だから私はぬかりなく、彼を知り尽くす。これから先、何年、何十年とかかろうとも。
「結婚するってことでいい?」
壮太は唇を離すと不安そうに尋ねた。
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