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まるで光景が浮かぶようだった。かつて自分にもあった青あざを嫁の体にみる、神山さん。言葉を失ったことだろう。
「私は悪魔を産んでしまったのよ。恐ろしかった。本当に恐ろしかった」
布団を肩まで被って宙を見つめる神山さんの話は終わらなかった。
「だから、私はこんな感じの雨の日に息子を呼び出した。のこのこやって来た悪魔に薬を盛って眠らせてから首に紐を掛けて神の元へと送り返したのよ。これは生み出してしまった私にしか出来ないことだし、私がやらなければならないことだと思ったから」
これは聞かなかったことにしていいだろうか。密室に二人きりだし、神山さんは認知症だ。あまりに重い罪の告白に私は青ざめていただろう。
「神父様、罪を悔い、改めよといいましたよね? 私は悪魔を産んでしまった罪を悔い、改めました。私以外が息子を殺めたら大罪ですが私は違いますでしょ? だから、私がどうしてもやらなければと思ったのです。私にしか出来ないこと。そうですよね?」
神山さんの瞳が私をじっと見つめていた。私はこの人が人殺しだと聞いて後退っていた。
また雨音が強くなってきた。私の悪夢はまだ始まったばかり。
終わり
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