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「あなたは」
「はい」
「昔、通い詰めた教会の神父様に似ているわ」
布袋顔と言われる私にまた一つ神々しい特徴が増えたと内心笑いがこみ上げた。
「それは光栄です。神山さんはキリスト教徒ですか」
「カトリックよ」
キリスト教の事は詳しくないので、そこはなるほどと流す。
「こんな雨の日は思い出します、神父様」
「はぁ」
「聞いてくださるでしょう? 私の懺悔を」
神山さんは確か軽い認知症だったはずだが、普段はまるでその症状がみられない。だから、混同しているのか、ただ似ているから冗談混じりに言っているのか判断がつかなかった。
「もちろん」
今夜の当直は新人のサポートを兼ねて多めに勤務している。だから、神山さんとお喋りしていてもたぶん問題ないだろう。
「私は悪魔に嫁いでしまいましたのよ。見合い結婚でとにかく親に決められた相手と結婚するより他なくて……」
時代なのかもしれない。私の周りには見合い結婚をした人は居ないが、親の代より上になると実は皆、見合い結婚をしていたらしい。
「外見も悪くなくて、裕福な家庭の男性で、それは皆に羨ましがられたのよ。でも、次第にその人の裏の面を知っていったわ」
そこで一旦言葉を切ると、細い腕を擦った。
「その人は無闇に殴るの。しかも服で見えないところだけ。私の体は結婚一ヶ月で青あざだらけよ。毎日泣いたから目の下なんてカサカサで皮が剥けていたわ」
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