雨の日の告白

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「それは……。ご実家に戻られなかったのですか?」  今ならドメスティックバイオレンスは立派な犯罪だし、法的手段をとれば接近禁止命令なども出してもらえるはずだ。 「殺すっていうんですもの。私ではなく、私の両親や弟たちを。お前が逃げたりしたら皆殺しにするからって。あの人ならやりかねないと思ってしまったのよ、だから私は逃げなかった」  そのうちに子供が出来てますます逃げられなくなったの。と、窓ガラスに映る自分に話すように語っていく。 「私にだけ手をあげるだけだったから、とにかく耐えた。子供には何一つ不自由なことはなかったし、いい父親とは言い難くても悪い父親でもなかったし」 「お子さんには手をあげなかったのですね」 「ええ。子供には無関心だったわ。名家の出だったから、跡継ぎが欲しかっただけで子供が欲しかったわけではなかったのよ」  神山さんの話は思っていた以上にハードで心が痛んだ。よく、そんな状況を耐え抜いたのにこんな穏やかな人間で居られると感心してしまうほどだ。
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