【2】崩壊の地へ

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〜東京都西多摩郡奥多摩町〜 東京都でありながら、大自然に包まれ、沢山の登山コースと、手頃な山が点在する奥多摩。 川乗山(かわのりやま)(川苔山)を有名な山岳写真家の眞戸羽(まとわ)時斗(ときと)が訪れていた。 標高1363mの川乗山は、埼玉県との県境に位置し、落差約40mの百尋ノ滝(ひゃくひろのたき)が人気スポットである。 彼からの通報が入ったのは、事件から3日後。 一般の登山道から外れ、あまり人が立ち入らない山の中。 奥多摩の自然を特集する雑誌のため、依頼を受けて写真を撮りに来ていた眞戸羽。 小さな谷へ差し掛かった時である。 「何だ?こんなに木が折れてるなんて…」 1人で行動する彼は、いつも独り言を呟く。 折れた木々を辿って、谷の下を見下ろした。 「なに⁉️何でこんなところに?」 そこにはあるはずのない、大きなクルーザーが横たわっていたのである。 〜警視庁捜査本部〜 その通報は、担当の紗夜(さや)に回された。 応接室の咲を呼び出す。 「見つかったって?」 「はい。多摩中央警察署から連絡があり、奥多摩の川乗山の渓谷で発見されました」 「奥多摩⁉️何でそんなとこなのよ?」 「まだ分かりませんが…考えられるのは竜巻かと…」 「竜巻?海に?」 「咲さん、海の竜巻は、大気の状態が不安定で上層の風が強く、下層で大量の水蒸気を含んだときに発生し易く、その水柱は雲と繋がり、日本近海でも小規模なものは度々発生しています」 昴が画像をモニターに映す。 「当日、陸地からですが、東京湾沖の竜巻画像がネットに投稿されていました」 その画像を映し出した。 「かなり遠いわね」 「でも咲さん、こんなに遠くてこの大きさだと言うことは…」 「撮影場所から推測して、海上での直径は約80m。想定される風速は秒速100m以上で、特大級のトルネードと同じ規模です」 「紗夜、専門家と気象庁に裏(確証)を取って。信じらんないけど、事故の正体に間違いなさそうね」 「分かりました。昴さん、専門家を調べて送ってください。淳、現場へお願い。私は気象庁へ」 「了解。最悪の結果だが…やっと終われるな」 確かに今回の事件は完結する。 しかし、その原因に不安を感じる紗夜であった。
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