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【3】未知の力
〜神奈川県横須賀市〜
アメリカ海軍横須賀基地、通称横須賀ベース。
旗艦『ブルー・リッジ』を主力とする、第7艦隊の基地であり、主に西太平洋を担当する。
指揮官マシュー・ジャレットに、巡回中の艦隊から緊急連絡が入った。
ジャレットは、即刻ハワイ・ホノルルの本部へ連絡し、国防総省ペンタゴンより、緊急リモート会議が召集された。
「報告します。日本の東約1600km、北緯33度、東経158度にて、国籍不明の潜水艦を探知。深度1000mで停船中。無線への返信はありません」
「国籍不明?近くに潜水艦はいないのか?」
メイソン防衛長官が問う。
「海軍で把握しているもので、一番近いのはハワイにありますが…トラブルの修理にあと1日かかります。艦は中型で、どの形にも属さない初めて見るものです」
不鮮明な超音波計測による画像が映る。
「いつからいるんだ?」
「少なくとも、艦の影を感知してから2日は過ぎています。あそこは火山帯の真上であり、ガスや電磁波に妨害されて、特定に時間がかかりました」
報告の遅れをつかれる前に述べた。
「ならば酸素が尽きて、浮上するだろう」
そこで会議に外信が入り込んだ。
「メイソン防衛長官、ラブです」
「おぉ、ラブさん。今アイスランドと聞いたが…」
「ええ、こちらの調査と会議は終わり、帰国するところです。長官、その潜水艦には、明らかにおかしな点があります」
「おかしな点?」
聞き返しながら、部下に目をやる。
(全く、知らんのか!)
「TERRAの監視衛星の画像と、頂いた画像を合わせて3Dモデル化したものがこれです」
3DのCG画像が映された。
「ご覧の通り、魚雷の発射口が無く、ハッチも形だけで、開閉構造が見当たりません」
「何だと⁉️」
映像が拡大された。
「確かに。つまりこれは…」
「無人の潜水艦と思われます。従って酸素は不用。浮上するかは、目的次第です」
「潜水艇を空輸し、至急調査しろ!」
「まぁまぁ、メイソン長官。落ち着いて安全な方法を考えなさい」
スミス大統領が、殺気立つ長官をなだめる。
「長官、大統領、今は世界中の火山帯が危険な状況にあります。潜るのは自殺行為です。かと言って、無人探査艇も操縦不能だと思います」
「ラブさんの言う通りです。色々考えましたが、今は監視するしかありません」
ジャレットがラブに同意する。
「では、どうやってアレはあそこへ?」
「全く交信がされてないことから、恐らく正確にプログラミングされたものと考えます。それから…問題が2つ」
ラブの声に耳を澄ます会議。
「1つ目は、微量ですが、放射線を感知しています」
「何だと!核か⁉️」
騒然となる参加者達。
「武器か燃料かは不明です。今、衛星の記録画像から、どこから来たかを、何とか突きとめようとしていますので、また連絡します」
「もう1つは何だ?」
「北緯33度、東経158度。そこは、2013年に発見され、一時は太陽系最大級の火山とまで報じられた、タム山塊がある場所なのです」
「タム山塊❗️何ということだ…あんな巨大な海底火山が噴火したら、どれだけの被害がでるか、想像もできない」
タム山塊は、北西太平洋に位置し、山頂は海面下約2000m、山の高さ(麓の深さ)は約6400mで、その広さは、450〜650kmに及ぶ火山帯の集結地である。
「タム山塊の噴火自体は問題ありません。海底火山は、世界中に1万以上あり、私達が知らない噴火を幾つも起こしています」
「どう言うことだ?」
「海底火山は、その多くが1000m以上の海底にあります。水深が10mで陸上の2倍の水圧がかかり、数千mでは数百倍の圧力です。陸上の火山は、マグマに含まれる水分が水蒸気となって膨張し、爆発的噴火を起こしますが、深海底では水圧のため水蒸気になれず、爆発的噴火は起きません」
「そうなのか…」
会議に参加している者達も安堵する。
それをラブは覆えす。
「しかし。連なった火山帯が連鎖的に噴火し、その振動は、太平洋プレートに影響を及ぼし、海水温上昇の生態系や気候への影響は計り知れません」
一転して騒めきと不安が再燃する。
「それに、あの謎の潜水艦…。もしも核爆弾なら、恐らくは水素爆弾。爆発は噴火を促し、数千から数百万度の熱は、火山上部の海水を大量の水蒸気に変えます。これにより、想像を絶する大爆発の噴火が予想されます」
「そんな…被害はどの程度に?」
「高速で、高さ数百mの津波が太平洋沿岸部を壊滅させ、数百度の熱波と強大な衝撃波により、アメリカでも内陸部に至る全てを消滅させるでしょう」
「まさしく…世界の終わり…か」
スミス大統領の呟きは、静かに恐怖を伝えた。
「専門家達と、何とか食い止める策を検討してみます。長官、軍の協力もお願いします」
「ラブさん、いつもながら世話をかけるが、頼む。もう一度世界を救ってください。軍でも施設でも、好きに使っていい。長官、衛星とレーダーで監視を続け、近付かない様にしなさい」
「艦隊は迎撃の態勢をとり、命令を待ちます」
以上で会議は終了した。
部屋をでる大統領の専用携帯が鳴った。
「ラブさん。話を聞きましょう」
予測していたスミス大統領。
リムジンの後部席へ1人乗り込み、完全閉鎖の密室とした。
「大統領、折言ってお願いが…」
それは、予想を遥かに上回るものであり、複雑な問題に対処が必要なため、3日間の猶予を貰った大統領であった。
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