【3】未知の力

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橋詰和馬(はしづめかずま)代表取締役の映像を見つめていた比嘉と新垣。 「この人…悪い人です」 「こいつ、銀行強盗犯です」 「はぁ?あんた達また…」 呆れて話しかけた咲が、2人が睨む様に真剣な目で見ていることに気付く。 「咲さん、銀行の内通者だとしたら?彼なら当然全ての情報を簡単に知り得るはず」 事実上2人の『何とな〜く』を信用した桐谷。 「なるほどね。家族を人質にとか、スキャンダルや不正ネタを知られてとか…あり得るわね。それなら、辞任の説明もつく」 「刑事さん、内通者って?」 新垣が咲に問う。 「えっとね💦今回襲われたのは、全て帝都銀行の支店なのよ。それも大金が丁度集まってて、一番隙がある時にね。だから、銀行内に犯人グループへ情報を知らせていた奴がいるのでは?ってことよ」 「実際に、今回も警備が手薄な時間帯で、夕方に大金が回収される予定だったのよね」 『アランドー』×2 話を聞いた比嘉と新垣が、同時に口にした。 「アラ…アランドー?何それ?」 「咲刑事さん、沖縄の言葉で、違うってこと」 咄嗟に出た方言を、佐久本が冷静に通訳した。 「すみません、つい出てしまって💦。あの人は内通者って人かも知れないけど、悪人です」 「そうなんです。あいつが、主犯…って言うのかな?一番悪い人です」 「そう言うならば、そうなんです」 根拠は?と言う前に、咲に告げる佐久本。 彼女の言葉や目には、妙に説得力があった。 「咲さん、それも一理ありね。辞める…と言うより、逃げる理由にもなるし。犯人の1人は、ロシア語を話したって言う凛の言葉も気になるわ」 「分かった。桐谷は戸澤と昴の3人で、容疑者として彼を調べて。絶対に逃がさない様に」 富士本を見る咲。 黙ってうなずく富士本。 「君達、よく分かんないけど、色々ありがとうね〜助かったわ。土屋、TERRAへ連れて行ってあげてくれる?」 「分かりました」 「あっ!サインでも貰っとくかな」 「サイン…ですか?」 3人が顔を見合わせる。 「あなた達、ミュージシャンなんでしょ。ラブさんがスカウトしたなら、きっと売れるはずだから、今のうちに…」 「すみません、まだそういうのは考えてなくて💦バンドメンバーも2人抜けたので、再編成になるだろうし」 「そうなんだぁ、じゃあまた今度」 「失礼します」 「ああ、すまなかったね、お疲れのところを大変な目に遭った上に、協力まで。ラブさんにも後でお礼と、連絡をしておくよ。では、頑張って。成功を祈ってるよ」 富士本に軽く一礼して、土屋と出て行く3人。 「全く理解できないけど、紗夜と昴の読心能力みたいなものかしら。TERRAのミュージシャンじゃなきゃ、本部(ここ)に欲しいくらいだわ」 「じゃ、行ってくるぜ」 「まずは、爆破された現場へ」 「戸澤、桐谷、十分気を付けてね。必ず刑事課の専用車を使う様に。こっちは爆破情報が漏れた経路を辿ってみるわ」 「了解」 出て行く2人。 TERRAから寄贈された専用車は、完全防弾だけではなく、様々な防御・攻撃・調査の機能が搭載されている。 「私はシステムで、橋詰和馬(はしづめかずま)の素性や通話記録の調査、それから都内の監視カメラで動向を追ってみます」 既に取り掛かっている昴。 こうして、帝都銀行連続強盗事件は、一旦解決したかにみえた。
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