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【4】暗の攻防
〜千代田区霞ヶ関〜
警視庁本部や経済産業省、財務省、法務省など、多くの省庁が建ち並ぶ国政地区。
そこから200mほどの高層ビルに入る桐谷。
登って行くエレベーターのランプで、停止した階を確認する。
(42階…最上階か)
入っているテナント名を見て、路上脇に停めてある車へと戻った。
「昴、ここのビルの42階にある『平和不動産』を調べて。ヤツがそこへ」
(店舗の相談か?)
『平和』の名前に、わざとらしさを感じた。
帝都銀行の橋詰を尾行・監視中の桐谷。
目黒の高級マンションから、自家用車で出かけた彼を追って辿り着いた。
1分で耳の通信機に返事が入る。
「桐谷さん、昴です。1年前に倒産しかけの不動産屋を、現社長の名倉裕彦が買い上げて改名し、幾つかのマンションや貸倉庫を扱っています」
「貸倉庫…怪しいわね。住所をPCに送ってちょうだい。調べてみるわ。それから…」
タブレットPCに送られて来たデータを開き、昴との通話に夢中の桐谷。
その後ろ50mに停まった車に気付いていない。
ワゴン車のスライドドアが開いた。
降りようとした男が、目の前に現れた黒尽くめの人物に驚く。
「何だお前…」
言いかけた先頭の男を、見えない速さの脚が蹴り上げ、顎が砕けて折れた歯が散った。
事態が分からない間に、乗り込んで来た人物の振るう武器が、狭い車内で的確に顔面や頭、喉を打ち砕く。
その間僅か15秒。
降りてドアを閉め、細い路地へと入って行く。
(全く…世話がやけるわね)
置いてあったバッグに、脱いだ黒のパーカーと覆面、武器のトンファーを入れた新咲凛。
バイクに乗り、傍受した場所へと向かった。
〜10分ほど前〜
当ビルの地下駐車場。
ラブの指示で、橋詰が来るのを待っていた凛。
このビルへの出入りは、TERRAの監視衛星の記録から、アイが割り出していた。
「凛様、標的の車がそちらへ向かっています。その後ろを桐谷刑事様の車、更にその後ろを不審な黒のワゴン車が追尾しています。お気をつけて」
「了解。張り込みはバレていたか…美月を殺るつもりね。対処するわ」
そうして、車を待っていた。
橋詰が到着し、エレベーターへ向かって来る。
スマホを操作するフリをしながら、凛が橋詰に軽くぶつかった。
「あっ、すみません」
「いや…いいが、気を付けなさい」
その際に、超小型の盗聴器をスーツの胸ポケットに入れた。
後は階段で上がって外へ。
桐谷から見えない路地から、敵へと向かった。
帝銀お台場支店を襲撃しようとした犯人グループの顔から、ロシア組織の関与を突き止めたラブは、桐谷を護ることも凛に命じていた。
傍受した会話はアイが録音し、裏付けの証拠として警察へ提出する予定である。
ビルから出てきた橋詰。
桐谷の車がないことを確認し、処置済みと判断して職場へ向かった。
後に凛がワゴン車を不審車通報し、重症の5人は警察の監視のもと、病院へ搬送された。
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