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〜ロシア北東部サハリン〜
移転した古い海軍基地には、取り壊しを待つ間、戦艦一隻が残っていた。
そのヘリポートへ、2機のヘリが着陸した。
銃を携帯した軍人4名と、指揮官のリーヴァル・カザフス・ハミルトンが迎える。
ヘリから降りる5人。
「お待ちしておりました、ヴェロニカ将軍」
「軍は制圧済みの様ね、ハミルトン大佐」
犯罪組織HEAVENの残党勢力が集まった組織であった。
「ええ、しかしまさかラルフ将軍の後を、貴女が引き継ぐとは驚きました」
「父は仲間にも知らせず、我々を含め全人類の消滅を企てましたが、私は違います」
「貴女達が止めなければ、私も生きてここにはいませんでした。どうぞこちらへ」
『達』はHEAVENの敵であるラブだと分かる。
サルコフとザイールを残し、ミネルヴァとツヴェンサーを連れて後に続く。
数日前にヴェロニカからの連絡を受け、新しい主導者を待ち侘びていたハミルトンであった。
基地内の作戦会議室へ入り、テーブルに着く。
「ここには何名の兵が居るのだ?」
座るなり、ヴェロニカが問う。
会話は、耳に装着したTERRA製の通信機で、外の2人にも聞こえていた。
「軍人が22名、技術者と作業員が10名です」
「軍の計画では、この基地は来月には、取り壊されると聞いたが?」
「彼らに我々の占拠は、まだ気付かれておりません。それまでに戦艦で太平洋へ出て、日本の東京を叩く予定です」
「戦艦で?直ぐに気付かれるのでは?」
少し躊躇するハミルトン大佐。
技術者らしい男と目を合わせ、うなずく。
「将軍、私は元軍の技術者のサヴィラムです。私が開発したステルスシステムにより、目視されない限り、レーダー等では探知できません」
「なるほど、軍がその様な開発をしていたと聞いていたが、お前がその開発者か?」
「はい。軍の上層部には偽のシステムデータを渡し、本物はあの戦艦に。元よりあれは、貴女のお父上が発案したものです」
父ではなく、世界最高頭脳と評された、母の発案であると悟るヴェロニカ。
「では、あの無人潜水艦もお前の作品か?」
突然極秘作戦の話を切り出され、緊張が走る。
サヴィラムが大佐と目を合わす。
「さすがは将軍、察しが早い。無人であることもお見通しとは」
「タム山塊に目を付けるとは、考えたものね」
賞賛の言葉と受け取り、胸に手を当て、軽く頭を下げるハミルトン。
その愚かさに、呆れるヴェロニカ。
ひとまず抑え、尋ねた。
「核爆弾…いや、水爆の爆破は簡単ではないが…上手くいくのか?自動制御で失敗しない確率はどの程度だ?」
技術力を甘く見られたと感じたサヴィラム。
そのプライドが口を割った。
「確かに水爆の爆破には、内蔵した複数の小さな原爆を、タイミング良く爆破する必要があり、原爆よりも難しい」
遮るわけにはいかず、焦るハミルトン。
誘いに乗ったサヴィラムに、笑むヴェロニカ。
〔参考〕
言葉は相応しくないが、核融合を利用した水爆は、クリーンな核爆弾と言われ、核分裂を利用した原爆の様に、大量の放射能は発生しない。
しかし核融合には、実に1億℃の超高熱が必要であり、そんな高熱を発生するものは地球上にはない。
そのために、小型の原爆を一次爆発させ、その放射熱を利用して水素爆弾を爆発させている。
従って、多少の放射能は生じるが、原爆の様に広範囲で強い放射能汚染はないのである。
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