【4】暗の攻防

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〜警視庁捜査本部〜 刑事課フロアの会議室に全員が集まっていた。 TERRAから凛、アイも参加している。 「さて、久しぶりにみんな揃ったわね。紗夜、淳、ご苦労様。まさか犯人は竜巻とはね💧」 「調べてみると、海外などでは時々ある様です。実証はできませんが、状況と実例から国も認めざるを得ないって感じで…」 「テレビで見たが、魚が空から降って来た現象と同じだな。しかし、よりにもよって大臣が2人も遭遇するなんてな」 ひどく疲れている様子の紗夜。 気になった富士本が声をかける。 「紗夜、大丈夫か?3日間も山の中で生存者を探し続けたんだ、少し休みをとってもいいんだよ」 「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」 生存者のを探し続けた紗夜。 その心労は、能力のない者には計り知れない。 その甲斐もなく、生存者はゼロであった。 疲労に加え、悲しみの落胆は大きい。 「桐谷、橋詰の確保はどう?」 「凛が付けた発信機は、駅のゴミ箱にスーツごと捨てられていて、銀行には現れず、昴が監視カメラで追ってますが…」 「結局逃げられちゃったのね。まぁ仕方ないか。アイツは橋詰じゃなく、元ロシア闇社会の諜報員、ザルハバール・ミゲル・トルヘフ。整形と変装用特殊メイクで入れ替わってたわ。調べたら、かなりの切れ者よ」 「えっ?ウソ!マジで⁉️」 予想もしない話に、仕切り屋の調子が狂う咲。 「橋詰は未婚で、元銀行頭取の両親は既に他界。親しい付き合いもない堅物。だから、誰も気が付かなかった…ってわけね。昴さん、探しても無駄よ、監視カメラは諦めましょ」 元CIA諜報員の桐谷が言うなら間違いない。 素直に諦めた昴。 「新咲さん、それから何だ?」 尋ねた戸澤が、立っている凛へ顔を上げる。 「橋詰がミゲルと呼ばれたことは、誰かさんが違法に盗聴した会話で分かった。まさかそれだけを言いに来たわけじゃないだろう」 さすが元公安の切れ者、戸澤。 「ラブからの情報よ。国際的犯罪組織HEAVENの創始者、ラルフ・ヴェノコフ。ヤツの副官を務めてたのも、ミゲルと呼ばれた元ロシア海軍の大佐だった。先の海戦で死んだが、ミゲル・トルヘフは恐らくヤツの息子」 「マジマジ⁉️東京に来て、あ〜んなにいっぱい武器を揃えたのは、ラブに復讐するつもりってわけ?」 「マズいですね。橋詰…じゃなくて、ミゲル所有の倉庫は他にもあって、既に中身は空っぽでした」 捜査員を手配した昴が告げた。 「まだ仲間がいるってわけね。そして、諦めちゃいない…」 「咲、平和不動産の方はどうなった?」 「届出のあった社長は架空の人物。恐らくミゲルの偽装ね。もう捜査員が着く頃だけど…」 「まだオフィスがあるの⁉️」 凛が鋭い目で咲に問う。 「直ぐに撤退させて、罠よ❗️」 ほぼ同時に電話が鳴った。 近くにいた土屋が出る。 「はい、警視庁刑事課です」 スピーカーに切り替える。 嫌なタイミングに緊張が走る。 しかし予想は外れ、それを…上回った。 「ふ…富士本君は…いるか?」 「花山警視総監⁉️富士本です、一体何が?」 背後が騒がしく、何より花山の声が弱々しい。 爆発音も聞こえていた。 「本庁舎が…何者かに攻撃…を受け…」 「総監、早くこちらへ!ここは危け…」 「ドドーン💥💥❗️」 息も止めて、固まる刑事課。 「アイ、監視衛星の画像を❗️」 凛の指示に瞬時に反応するアイ。 メインモニターにその光景が映された。 「なっ⁉️なんてことに…」 あの咲でさえ言葉が途切れた。 「ヤツの狙いは日本か❗️」 「クソッ❗️」「ダンッ!」 戸澤の声が響き、淳一がテーブルを叩く。 修羅場に慣れた凛と桐谷だけが、かろうじて正気を保っていた。 「アイ、砲撃地点を割り出して!」 サブモニターに、衛星にある予備のカメラ映像が映り、ズームアップした。 「チッ!あのビルか❗️最上階からは、警視庁やほとんどの省庁が見えるわ」 ロケット弾が次々と建物を破壊して行く。 警視庁本部ビルは、既に形を留めていない。 その時、サブモニターの映像が遮られた。 瞬間的に勘が働く凛。 「ティーク!ダメ❗️下の階は一般人よ!」 真上から急降下していたジェットヘリが、ミサイル発射寸前で旋回した。 「凛、最上階に人はいない。リモート操作だ」 ティークのスパイアイが、最上階を透視した。 そこに隙が生まれた。 「クッ❗️」 別の方向から放たれた、熱源探知式対空ミサイルが、ティークの機体をロックしていた。 全速力で急上昇する。 過大な加速度に身体中が(きし)む。 (無理か…) 脱出ボタンに手を伸ばした時。 「ヅドーン💥」 ミサイルが爆発した。 「らしくないわよティーク。あっちお願いね」 ラブのジェットヘリが現れ、ビルヘ向かう。 「了解💧」 「ガガガガガカ…」 機銃が最上階を粉砕し、砲撃が止んだ。 「アイ、遠隔操作の位置は?」 ティークの機体が、アイが示す標的に向かう。 (追撃はなしか?) 「ラブ様、ティーク様、ドローンです。捜査信号もドローンを経由しており…消えました」 「ドン💥!」 ティークの小型ミサイルが、空中で停止しているドローンを破壊した。 まるで戦場と化した霞ヶ関。 燃え盛る炎🔥と破壊された各省庁ビル。 (ミゲル…許さない💢❗️) 怒りに歯を噛み締め、見下ろすラブであった。
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