【4】暗の攻防

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〜南極〜 南極大陸。 世界で5番目に大きな大陸であり、面積は、オーストラリア大陸のほぼ2倍。 大陸の約98 %が氷で覆われ、その厚さは平均2kmにも及ぶ。 観測された最低気温は−97.8 °C。 さらに乾燥と強風。 そんな大陸に各国の研究所が点在し、約5000人が滞在している。 マクマード基地は、1956年にアメリカ海軍が設営した拠点から始まり、現在はUSAP(アメリカ国立科学財団南極プログラム)が保有し、民間会社によって運営されている。 船舶の接岸が可能であるほか、ペガサス・アイスランウェイ(大陸氷河上滑走路)、シー・アイスランウェイ(冬季氷結海面上滑走路)、ウィリアムズ・フィールド(雪原上滑走路)の3つの航空滑走路を持つ、南極最大規模の基地である。 「ローガン隊長、あれが最後の便です。これで全員避難が完了します」 強風が吹き荒れる中、着陸態勢に入る大型輸送機を指さすミラン副隊長。🛬 「そうか、何とか間に合ったな。しかし…こんな天候で良く飛べるものだ…」 マクマード基地がある場所は、ロス島と氷床でつながっており、そこには標高3,794mのエレバス山がそびえ立っている。 エレバス山は、地球上で最も南にある活火山で、富士山と同様な成層火山(複数回の噴火で溶岩が積み重なった円錐状の火山)である。 その雪と氷に囲まれた極寒の火口には、1000℃ほどのマグマが煮えたぎる溶岩湖があり、今まさに破局噴火を迎えようとしていた。 エレバス山 f7ef434a-9881-4623-959e-3ca0fc3f20df 火口の溶岩湖 0fcbaff0-7fc6-4834-b814-bf542a8966fe 強風に傾きながらも、何とか着陸した輸送機。 向きを反転させ、後部ハッチが開いた。 「急げ❗️もう時間がない」 ティークと同じく、ラブの片腕であるT2。 ロックラック星のティムジー2世、通称T2。 身体中に埋め込まれたパワーチップにより、破壊的なパワーを出すことができた。 また、あらゆるものの操縦に於いて、神技的な感性と技術を持ち、武器の開発も得意とするメカニックである。 最も早く噴火を迎えると推定した時点で、ラブはT2を南極へ派遣したのである。 彼が手を加えた米軍の輸送機で、尚且つ彼の操縦でなければ、到底なし得ない救出であった。 「本当にありがとう。いくら感謝してもしきれないよ。君が来なければ確実に全滅していた」 「感謝なんていらねぇから、早く皆んなを乗せろ❗️」 エレバス山へと続く氷床に手を当て、その脈動を感じるT2。 (ヤバいな…アレが効いてくれればいいが…) 最後にローガン隊長が乗り込み、親指を立てるのを確認してハッチのボタンを押し、操縦席へと向かう。 「シッカリ掴まってろよ、かなり揺れるぜ!」 コスモジェットエンジンの出力MAX.で発進。 風の僅かな違いを読み、それを利用して一気に操縦桿を引く。 「ウォォォォオ❗️」 抗う重力と荒れ狂う風、それに勝るとも劣らない気力と腕力。 高度1000m辺りまで上がった時。 「ヒュッ…」 一瞬、風が止まった。 そして…「ヅドドドォォーン💥🔥❗️」 火柱が雲を突き抜けた🌋。 その僅か0.5秒後。 「ババババババババ💥ヴァーン💥💥」 T2が火口内に仕掛けた燃焼抑制爆弾が一斉に爆発し、重炭酸ナトリウムや液体窒素が火柱を断ち、湧き上がるマグマへと降り注ぐ。 「衝撃に備えろ❗️」 叫んだ途端に噴火の爆風が、容赦なく背後から襲い掛かる。 「うわぁ!」 「キャー!」 何人かが耐えきれずに悲鳴をあげる。 それを周りの者が、必死で支える。 「頑張れ❗️ベルトを付けてる者に皆んな掴まって、力を合わせるんだ!」 ローガン隊長の声に、力を振り絞って耐える仲間たち。 「ク〜!キッツイぜこりゃ!」 バランスを崩したら最後、この大型輸送機の態勢を立て直すことは不可能である。 絶妙な操縦と腕力で操縦桿を維持し、上昇を続ける。 その状況で、第二波が襲い掛かる。 無数の火山弾が更に上空から降り注いだ。 「クソッ…高度が足りねぇか。これでもくらいやがれ❗️」 機体後部の両サイドに備え付けた発射口から、次々と打ち出される小型ミサイル。 「ババババババ💥💥💥」 火山弾の手前で爆発し、分散した金属片が火山弾を迎え撃つ。 火山弾は、噴火で溶岩の一部が放出され、飛散しながら冷却・形成される直径10㎝前後の火山岩塊である。 すり抜けた幾つかが、機体にめり込む。 強化された主翼、尾翼はそれに耐えた。 一気に高度1万mへ上昇し、水平飛行に移る。 ここまで来るともう安全である。 「ふぅ〜。皆様、お疲れ様でした〜」 「やった❗️助かったぞ❗️」 狂喜の歓声をあげ、抱き合って喜ぶ皆んな。 そして盛大な拍手が機長T2に贈られた。
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