【5】護る者

2/7

99人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
〜TERRA本部基地〜 ビルの地下20mに、ある極秘エリア。 マザーシステムのAI(アイ)が居る本部基地。 エレベーターが開き、ラブが3人を連れて基地内へ入る。 「凄い…まるでSF映画みたいだ」 「こんな場所があったなんて…」 「極秘…なんですよね?」 さすがの佐久本も、驚きを隠せなかった。 入り口で、新咲凛が迎える。 「久しぶりね。あなた達の歌、私も気に入ったわ。今の世界に一番必要な癒しの心って感じ」 「あっ、あの時はありがとうございました」 「礼を言うのはこっちよ。あなた達がいなきゃ、事件はまだ続いていたはずだから」 珍しくしおらしい凛。 「ようこそ、比嘉様、新垣様、佐久本様。メインシステムのアイです。よろしくお願いします」 3Dで現れたアイの擬似体に驚く3人。 「ここが私のもう一つの仕事…場?って言うか、私の使命を果たす為の秘密基地。アイ、映して」 部屋の中央にいたアイが消え、地球が現れた。 それに沢山の赤い印が点き、赤いラインで結ばれる。 「これは…火山帯と火山ね」 「さすが佐久本さん。強力な報道規制により、まだ公表はされていないんだけど、それももう限界。既にアイスランドと南極の火山が噴火して、大勢が避難しました」 「ラブ様、南極のT2から緊急連絡です」 一瞬3人に目をやるラブ。 「いいわ、繋いで」 アイがスピーカーに繋いだ。 モニターには、南極エレバス山の映像が映る。 「T2、あなたの爆弾の効果はあった様ね」 「確かに、エレバス山の噴火は最小限に抑えられたが…違うんだ、ラブ」 「どう言うこと?」 「あんな簡単に、破局噴火を抑えられるはずはない。マグマ量が予想の30%程度しかない」 「それってつまり…」 「本命はここじゃないってことだ!」 「アイ、南極の監視衛星で、大陸を熱分析してみて!」 直ぐにメインモニターが南極に切り替わり、熱分析データが重なる。 「そんな…まさか⁉️」 最大4.5km、平均2kmにも及ぶ、分厚い氷の下にある南極の大地。 そこには100mから3850mの高さの火山が、138箇所発見されており、世界で最も大規模な火山地域と言える。 「南極点から南米大陸方向へ約1500km地点を中心に、周囲1000km範囲のデータが異常値を示しています」 アイが、色を変えて表示した部分を説明した。 「想像を絶するスケールね」 凛の言葉にうなずく3人。 それが意味する脅威を、知るはずもない。 「その辺りには、火山は見つかっていないはずじゃ…」 言いかけてやめたラブ。 「見つかってない…ではなく、見つけられていなかったってことね」 「はい、ラブ様。この辺りの氷は4kmほどの厚さのため、火山を特定できていません。この熱量換算値は、衛星から局部的に放射した音波の反復値から推定したものです」 「アイ、この値からすると…地表の温度は1000度近いわね」 IQ230の月島風花。 国際医療テクノ大学を出て、TERRA開発部の事実上の部長を勤めながら、医療機関にも席を置く天才で、凛の妹でもある。 「つまり既に大地は、噴火したマグマに覆われていると言うことね。なんてことに…」 分厚い氷の下にある火山は、その氷の重みにより、爆発的に噴火することはない。 しかし、流れ出た溶岩により、地表近くの氷が溶け、氷河の流れが加速する。 氷河は、長い年月をかけて降り積もった雪が、押し固められた氷であり、ゆっくり海へと押し出されている。 南極の地表を覆い尽くす氷も、大陸氷河(氷床)と呼ばれる氷河の一種であった。 もしも南極の大陸氷河が全て溶けた場合、重石(おもし)が消えた大陸は浮かび上がり、更に溶けた氷で、世界の海面は現在より40〜70m上昇すると考えられている。 それは、世界の陸地の40%を失うことを意味していた。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加