99人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
〜TERRA本部基地〜
ビルの地下20mに、ある極秘エリア。
マザーシステムのAIが居る本部基地。
エレベーターが開き、ラブが3人を連れて基地内へ入る。
「凄い…まるでSF映画みたいだ」
「こんな場所があったなんて…」
「極秘…なんですよね?」
さすがの佐久本も、驚きを隠せなかった。
入り口で、新咲凛が迎える。
「久しぶりね。あなた達の歌、私も気に入ったわ。今の世界に一番必要な癒しの心って感じ」
「あっ、あの時はありがとうございました」
「礼を言うのはこっちよ。あなた達がいなきゃ、事件はまだ続いていたはずだから」
珍しくしおらしい凛。
「ようこそ、比嘉様、新垣様、佐久本様。メインシステムのアイです。よろしくお願いします」
3Dで現れたアイの擬似体に驚く3人。
「ここが私のもう一つの仕事…場?って言うか、私の使命を果たす為の秘密基地。アイ、映して」
部屋の中央にいたアイが消え、地球が現れた。
それに沢山の赤い印が点き、赤いラインで結ばれる。
「これは…火山帯と火山ね」
「さすが佐久本さん。強力な報道規制により、まだ公表はされていないんだけど、それももう限界。既にアイスランドと南極の火山が噴火して、大勢が避難しました」
「ラブ様、南極のT2から緊急連絡です」
一瞬3人に目をやるラブ。
「いいわ、繋いで」
アイがスピーカーに繋いだ。
モニターには、南極エレバス山の映像が映る。
「T2、あなたの爆弾の効果はあった様ね」
「確かに、エレバス山の噴火は最小限に抑えられたが…違うんだ、ラブ」
「どう言うこと?」
「あんな簡単に、破局噴火を抑えられるはずはない。マグマ量が予想の30%程度しかない」
「それってつまり…」
「本命はここじゃないってことだ!」
「アイ、南極の監視衛星で、大陸を熱分析してみて!」
直ぐにメインモニターが南極に切り替わり、熱分析データが重なる。
「そんな…まさか⁉️」
最大4.5km、平均2kmにも及ぶ、分厚い氷の下にある南極の大地。
そこには100mから3850mの高さの火山が、138箇所発見されており、世界で最も大規模な火山地域と言える。
「南極点から南米大陸方向へ約1500km地点を中心に、周囲1000km範囲のデータが異常値を示しています」
アイが、色を変えて表示した部分を説明した。
「想像を絶するスケールね」
凛の言葉にうなずく3人。
それが意味する脅威を、知るはずもない。
「その辺りには、火山は見つかっていないはずじゃ…」
言いかけてやめたラブ。
「見つかってない…ではなく、見つけられていなかったってことね」
「はい、ラブ様。この辺りの氷は4kmほどの厚さのため、火山を特定できていません。この熱量換算値は、衛星から局部的に放射した音波の反復値から推定したものです」
「アイ、この値からすると…地表の温度は1000度近いわね」
IQ230の月島風花。
国際医療テクノ大学を出て、TERRA開発部の事実上の部長を勤めながら、医療機関にも席を置く天才で、凛の妹でもある。
「つまり既に大地は、噴火したマグマに覆われていると言うことね。なんてことに…」
分厚い氷の下にある火山は、その氷の重みにより、爆発的に噴火することはない。
しかし、流れ出た溶岩により、地表近くの氷が溶け、氷河の流れが加速する。
氷河は、長い年月をかけて降り積もった雪が、押し固められた氷であり、ゆっくり海へと押し出されている。
南極の地表を覆い尽くす氷も、大陸氷河(氷床)と呼ばれる氷河の一種であった。
もしも南極の大陸氷河が全て溶けた場合、重石が消えた大陸は浮かび上がり、更に溶けた氷で、世界の海面は現在より40〜70m上昇すると考えられている。
それは、世界の陸地の40%を失うことを意味していた。
最初のコメントを投稿しよう!