99人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
少し考えていたラブ。
「アイ、このままの状態が続いた場合、氷床はどうなるかをシミュレーションしてみて」
「分かりました。現在の範囲で実施してみます。5分ほどお待ちください」
「T2、チェコノヴァが作ったトリノビーム砲は、まだライオネルに?」
「ああ、機密として厳重に格納されている筈だ。まさかアレを使うのか、ラブ?」
「今のところ他に方法はないわ。アイ、ルイスに繋いで」
解析をしながら、通信を繋ぐアイ。
チェコノヴァは、世界中の軍隊と基地の消滅を企み、太平洋に沈んだヴェロニカの姉である。
「アメリカ海軍空母ライオネル艦長、ルイス・アボットです。ラブさん、何か問題ですか?」
「ルイス艦長、今は…ハワイね?」
アイが、座標をモニターの地図に示した。
「はい、キラウエア火山の活動が活発化し、島民を海軍の鑑に避難させているところです」
「トリノビーム砲は、まだライオネルに?」
「はい。極秘に保管してあります。今となっては、使える者はラブさんしかいませんけどね」
「悪いけど、使える状態にして、甲板に設置して下さい。火山の爆発を止めます」
「…まさか、アレでキラウエア火山を撃つ気ですか?」
「既にスミス大統領に、許可は得ました」
「そうですか…分かりました。ラブさんの決断なら、他に方法が無いのでしょう。急いで準備しておきます」
通信を切り、悔し気に拳を震わすラブ。
緊迫感は3人にも十分伝わっていた。
「いきなりこんな状況を見せて、ごめんなさいね。でもこれが今の世界の現実なの」
「こんなことになっているなんて…」
「かなりヤバそうですね」
「私たちはどうすれば?」
3人の意思は決まっていた。
(この国を守る❗️)
その熱い心だけは、感じることができたラブ。
(今は、彼らに頼るしか無い!)
「日本には幾つもの火山帯があります。あなた達の能力を、人じゃなく、火山に向けて使って欲しい」
「そんなこと…やったことがないわ」
「火山になんて、無理だよ」
「比嘉さん、新垣さん、今はできるできないじゃなく、やるしかない❗️」
佐久本の強い意思と統率力に、ラブと凛は驚いていた。
「よしっ!多香子、ラブさん達は世界を守ろうとしている。僕たちは、この国の守人としての使命を果たそう❗️」
「…で、やる気はあるけど。どうするの?」
「えっ…美優、分かってないのか💧」
「分かるわけないじゃない💦」
純真な3人に緊張感が消え、微笑むラブと凛。
(いいチームだこと)
「日本の火山は、海外のものに比べると小さいものが多く、予測が出来ないことが分かり、周りに人が居住してるから、破壊出来ないの。だから新垣さんは、アイの示す火山帯で、どの山が先に噴火するかを視て。比嘉さんは新垣さんが視た未来から、その原因となるマグマ溜まりを辿り、佐久本さんはそれを変えてください。それを繰り返して、アイが示す大きな火山に導いて欲しい」
佐久本の能力でも、強大な地球の力を止めることはできない。
「そして、その山が噴火する日時を多香子が教えればいいわけね?」
それを理解している佐久本。
「そうです。後はT2が開発した、マグマの熱を急激に下げる爆弾を、自衛隊と在日アメリカ軍が仕掛けます。沢山の火山帯も元を辿れば、北海道、本州甲信越、関東、九州、沖縄地区の5つに絞れます」
「分かった❗️ラブさん、日本は僕たちに任せて、世界を救ってください❗️」
直向きで前向き、そして決断力の速さが比嘉の強さである。
「必ずやり遂げます❗️」
比嘉と2人で一つを成す、新垣の協調心。
「私に任せて❗️」
佐久本の自分を奮い立たせる自信。
「あなた達3人なら、必ずできるわ!」
内心では、まだ大人でもない若い彼らに、この国の重さを課することは辛かった。
しかし生まれ持った護る者としての使命。
そう割り切るラブであった。
その後、緊急国会を招集したラブは、彼らの力は隠して対象とする5つの火山を伝え、自衛隊とアメリカ軍に協力を要請したのであった。
最初のコメントを投稿しよう!