【5】護る者

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少し考えていたラブ。 「アイ、このままの状態が続いた場合、氷床はどうなるかをシミュレーションしてみて」 「分かりました。現在の範囲で実施してみます。5分ほどお待ちください」 「T2、チェコノヴァが作ったトリノビーム砲は、まだライオネルに?」 「ああ、機密として厳重に格納されている筈だ。まさかアレを使うのか、ラブ?」 「今のところ他に方法はないわ。アイ、ルイスに繋いで」 解析をしながら、通信を繋ぐアイ。 チェコノヴァは、世界中の軍隊と基地の消滅を企み、太平洋に沈んだヴェロニカの姉である。 「アメリカ海軍空母ライオネル艦長、ルイス・アボットです。ラブさん、何か問題ですか?」 「ルイス艦長、今は…ハワイね?」 アイが、座標をモニターの地図に示した。 「はい、キラウエア火山の活動が活発化し、島民を海軍の(ふね)に避難させているところです」 「トリノビーム砲は、まだライオネルに?」 「はい。極秘に保管してあります。今となっては、使える者はラブさんしかいませんけどね」 「悪いけど、使える状態にして、甲板に設置して下さい。火山の爆発を止めます」 「…まさか、アレでキラウエア火山を撃つ気ですか?」 「既にスミス大統領に、許可は得ました」 「そうですか…分かりました。ラブさんの決断なら、他に方法が無いのでしょう。急いで準備しておきます」 通信を切り、悔し気に拳を震わすラブ。 緊迫感は3人にも十分伝わっていた。 「いきなりこんな状況を見せて、ごめんなさいね。でもこれが今の世界の現実なの」 「こんなことになっているなんて…」 「かなりヤバそうですね」 「私たちはどうすれば?」 3人の意思は決まっていた。 (この国を守る❗️) その熱い心だけは、感じることができたラブ。 (今は、彼らに頼るしか無い!) 「日本には幾つもの火山帯があります。あなた達の能力を、人じゃなく、火山に向けて使って欲しい」 「そんなこと…やったことがないわ」 「火山になんて、無理だよ」 「比嘉さん、新垣さん、今はできるできないじゃなく、やるしかない❗️」 佐久本の強い意思と統率力に、ラブと凛は驚いていた。 「よしっ!多香子、ラブさん達は世界を守ろうとしている。僕たちは、この国の守人(もりびと)としての使命を果たそう❗️」 「…で、やる気はあるけど。どうするの?」 「えっ…美優、分かってないのか💧」 「分かるわけないじゃない💦」 純真な3人に緊張感が消え、微笑むラブと凛。 (いいチームだこと) 「日本の火山は、海外のものに比べると小さいものが多く、予測が出来ないことが分かり、周りに人が居住してるから、破壊出来ないの。だから新垣さんは、アイの示す火山帯で、どの山が先に噴火するかを視て。比嘉さんは新垣さんが視た未来から、その原因となるマグマ溜まりを辿り、佐久本さんはそれを変えてください。それを繰り返して、アイが示す大きな火山に導いて欲しい」 佐久本の能力でも、強大な地球の力を止めることはできない。 「そして、その山が噴火する日時を多香子が教えればいいわけね?」 それを理解している佐久本。 「そうです。後はT2が開発した、マグマの熱を急激に下げる爆弾を、自衛隊と在日アメリカ軍が仕掛けます。沢山の火山帯も元を辿れば、北海道、本州甲信越、関東、九州、沖縄地区の5つに絞れます」 「分かった❗️ラブさん、日本は僕たちに任せて、世界を救ってください❗️」 直向(ひたむ)きで前向き、そして決断力の速さが比嘉の強さである。 「必ずやり遂げます❗️」 比嘉と2人で一つを成す、新垣の協調心。 「私に任せて❗️」 佐久本の自分を奮い立たせる自信。 「あなた達3人なら、必ずできるわ!」 内心では、まだ大人でもない若い彼らに、この国の重さを課することは辛かった。 しかし生まれ持った護る者としての使命。 そう割り切るラブであった。 その後、緊急国会を招集したラブは、彼らの力は隠して対象とする5つの火山を伝え、自衛隊とアメリカ軍に協力を要請したのであった。
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