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〜空母ジェラルド〜
垂直降下する機体は、もう目視確認できた。
艦橋に隊員が駆け込んで来た。
「ミッチェル艦長、攻撃の許可を❗️」
「ハンク、焦るな。アレには機銃一つ付いていない。指示を待て」
「しかし❗️」
「艦長命令だ。従え!」
「クッ!」
出て行くハンク。
「若者は元気なもんですなぁ艦長」
「ハンクの家族は、ラルフの攻撃で消滅した。彼の気持ちは分かるが…勝手な真似はできん」
既に海面に着水した機体を見つめる艦長。
ラルフの娘であるチェコノヴァに、海軍基地を攻撃され、大勢の知人を亡くしたミッチェル。憎いのは同じであった。
〜TERRA特別会議室〜
「ヴェロニカ、何をするつもり?」
複雑な心境で、ラブが問う。
「その輸送機には、私が開発した『高速爆発抑制剤散布装置』を搭載している」
「そんな⁉️まだどの国も開発できていないものを?」
「簡単な試作実験は成功したわ。こんな大物は初めてだが、ただ大きくなっただけで、原理的には同じ。私の設計に間違いはない!」
相変わらずの自信家である。
「ラブさん、何だねそれは…?」
「スミス大統領、高速爆発抑制剤散布装置は、燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)を無力化するもので、各国で軍事用に研究が進められています。元は鉱山や可燃性ガスが充満し得る場所で、爆発を抑制するために作られた自動消火装置の一種です。爆発の圧力変化を感知して、爆発が最大になるまでの極わずかな時間で、重炭酸ナトリウムなどを散布し、燃焼を抑制・減少させます。TERRAの爆弾も似た様なもので、更に液体窒素を用いています」
「燃焼を抑えても…水爆の威力は抑えられないのではないかね?」
「ラブの先日の説明を、良く理解して無かった様ね。爆発は海底1500mよ。巨大な火山帯の破局噴火でさえ水圧で抑えられ、海面には穏やかなまま。要するに、水爆の熱によって大量に発生する水蒸気さえ無ければ、破局的な水蒸気爆発は起きないのよ。分かった皆さん」
何となく理解した気の首脳陣たち。
しかし…
「ラブさん…彼女を信用してよいのか?」
少し答えに詰まるラブ。
だが躊躇う間はない。
「わざわざここまで来させる理由を、他に考えつきません。それに…私は爆発で発生した津波を、多数の爆弾で分断させ、被害を最小限にするつもりしたが、波の速さに合わせられるか自信はありません。従って、今はヴェロニカを信じるのが、最良の希望と判断します❗️」
「大統領、攻撃許可の申請が来ていますが…」
「攻撃はしない❗️世界の皆さん、私はラブさんを最後まで信じるつもりだが、どうかね?」
無回答はあれど、反対は無かった。
(よし…)
「全〜ったく、はるばる救いに来てやったのに、私じゃなくてラブを信じるとはね。まぁ、どうでもいい。リモート操作で、装置を積んだ無人潜水艇が、もうすぐ潜水艦の真横に着く。ラブ、あんたは他へ。ここは私に任せなさい」
「貸し借りは無しよ、ヴェロニカ」
「当たり前だ」
(アイがあんなステルスに、気付かない訳はない。最初からあてにしてたんでしょ、ラブ)
「では皆さんは、予定通り行動を。私は空母ライオネルへ向かいます」
会議を終了させたラブ。
「うまく信じさせたわね」
「さて、何のことかしら?それより凛、あなたはあの3人を手伝ってあげて。かなり…危険な賭けだから。標的と時間が決まり次第、各地の自衛隊に連絡をお願いね!」
ラブとヴェロニカ。
敵となった今でも、信頼関係は生きている。
それを確信した凛であった。
(果たしてそれで…彼女を殺れるのかしら?)
ラブがTERRAの屋上から飛び立った直後。
空母ジェラルドの砲台が動いた。
「艦長❗️8番の砲台が手動で動いてます❗️」
「なにっ⁉️…ハンクか」
「ドンッ❗️」
やめろと言う間もなく1発の砲弾が放たれた。
「ドドーン💥💥」
海上の輸送機が爆発し、爆煙が上がる。
「な…なんてことを…」
〜ホワイトハウス〜
伝令が転がる様に駆け込んで来た。
「な、何だね慌てて?」
「空母ジェラルドが、あの輸送機を攻撃し、は…破壊しました❗️」
「なにっ…バカな⁉️直ぐに艦長へ繋げ❗️」
「は、はい💦」
〜ロシア サンクトペテルブルク〜
サルコフが歳を顧みず、走り込んで来た。
「どうしました、叔父上?」
肩で息をするサルコフを見る。
既に悟った。
「やられたのか⁉️」
「ああ、突然アメリカの空母から砲撃され…」
「そんな❗️イヴァンナやヴィクトル、マルティン達は?」
「残念です…」
「将軍、報復の御命令を」
ヴェロニカの右腕ツヴェンサーが呟く。
「何かのトラブルと考えます。ご辛抱を」
策士で技術者のザイールが、冷静に助言する。
「確かに。アメリカがラブを裏切るとは思えない。父か姉への個人的な恨みであろう」
「しかし…⁉️」
言いかけたツヴェンサーが、ヴェロニカの震える拳を見てやめた。
「だが。この責任は、大統領に償って貰う❗️」
怒りを露わにするヴェロニカであった。
〜太平洋上空〜
1万5千km上空を飛行するラブの頭脳に、アイからの通信が入る。
「どうしてっ⁉️」
思わず声が出た。
(砲撃手の個人的恨みの様です)
(ヴェロニカからは?)
(何も)
(ヴェロニカに繋いで❗️)
(先ほどから試してますが繋がりません)
(大統領に至急護衛を付けて、24時間迎撃体制をとる様に。彼女なら…きっと狙って来るわ)
やり場のない悔しさを噛み締める。
(クソッ❗️こんな時に…)
今は南極に集中するしかない。
せめて装置のセットが間に合っていることを祈った。
そうでなければ、日本はもとより、太平洋沿岸は滅亡の時を迎える。
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