【6】激闘

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〜TERRA〜 比嘉と新垣、佐久本の3人は、その能力を人ではなく、映像に映ったモノに向ける訓練を続けていた。 「そうですか…残念です。あなたは最後まで全力を尽くして、使命を(まっと)うしてください。それから…ごめんなさい」 「謝らないでください。仕方のないことだし、悔いはありません。ありがとうございました。それから…さようなら」 電話を切る。 頬を伝う涙が、一つ、また一つ落ちていった…。 〜地下秘密基地〜 凛が状況をラブに伝えている。 そこへ3人が入って来た。 「さぁ…きょうも頑張るか❗️」 比嘉がいつもの様に気合いを入れる。 疲れているのは、凛の目でも明らかに分かる。 しかし、もう猶予はない。 「比嘉さんと新垣さんは、生のリアルな映像で能力を発揮できるようになったわね。佐久本さんは、やはりそのモノを目視するか、少なくとも近くにいる必要がある事も分かった」 佐久本が二人が視た世界を変えるには、その目で見る必要があった。 「計測データから、沖縄諸島から鹿児島の火山帯が臨界点に近付いている。いよいよ本番よ。私は佐久本さんを連れて飛ぶから、場所が特定出来たら連絡して。桜島の破局噴火は、何としても回避しないと」 「分かりました」 「了解です!」 「行きます」 正直なところ、こんな若者には酷な使命であり、仕方ないとは言え、気乗りはしない凛。 「じゃあ、アイと風花、ここはよろしく!」 「姉さん任せといて!」 その目を見て、出て行く凛であった。 (強くなったな…沐阳(ムーヤン)) 「じゃあ多香子、早速だけど現在の桜島の火口の映像から、破局噴火を視てちょうだい。かなりショッキングなものだと思うから、体に異常を感じたら右手のボタンを」 「分かったわ風花、やってみる」 頭には、3人の脳波を分析し、風花が開発した増幅装置を着けた。 心拍や血圧などのバイタル面は、常にアイが監視している。 「晋ちゃんは、多香子の視たものに集中して、干渉しない様に気を付けてね」 「イエッサー!」 晋也も頭に装置を着けた。 集中する多香子。 徐々に脳波が変化し、現在医学ではとても理解できない、未知の波長が強くなっていく。 「グッ…」 多香子の脈拍や血圧が急上昇し、どことは言えない苦痛に、歯を食いしばって耐える。 「そんな…酷い…ダメ、ダメーッ❗️」 瞬時に風花が糖分と軽い鎮静剤を注射し、バイタルの安定を見て、装置を外した。 その直後。 「ウッ…何なんだこれは?グッァ…クソッ!」 初めて見る光景に、一瞬硬直したが、気力でその過去を辿る。 約20秒後。 「こ…これか?…間違いない、これだ❗️」 バイタルが異常値を示す。 (比嘉さん、もう少し頑張ってください。そこはどこですか?) アイが比嘉の意識に入って囁く。 「こ…ここは…」 視ているものから距離を離して行き、覚えた海図に重ね合わせる。 「ここだ❗️あっ…」 一言叫んで、気を失った。 「アイ、位置を特定してモニターに」 比嘉の意識から、読み取ったマグマ溜まりの位置を映すアイ。 「霧島火山帯のかなり南西寄りね。海底の傾斜によって九州側へ流れ易いけど、ここなら硫黄鳥島か西表(いりおもて)島北北東海底火山が近いわね。風間教授、どう思いますか?」 ラブは、帝都大学で火山の研究をしている、風間明(かざまあきら)教授に、協力を頼んでいた。 「被害は西表海底火山が小さくて済むが、海底の爆破は難しいだろう。規模的にも硫黄鳥島火山の方が大きく、約100年前の大噴火で全島民が久米島に移住し、現在は無人島だ」 「なら決まりね。アイ、沖縄で待機しているアメリカ軍に指示して、爆弾の設置を急いで!終わり次第、誘爆で強制噴火させるわ」 「了解しました」 医療従事者として、2人の容体を診ながら、同時に複数を考え、ムダなく動く風花。 IQ230の頭脳をフル回転させる天才。 TERRAを任せられる1人となっていた。 硫黄鳥島 772f540e-70ad-4df2-9c37-edf5958fc9aa
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