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〜上空15000m〜
佐久本を乗せているため、通常より低い高度を飛ぶ凛のジェットヘリ。
「大丈夫か?」
「なんとか💧」
遊園地のフリーホールは大好きな彼女。
しかし…いきなり15000mへの垂直上昇は、さすがにキツかった。
「良かった。出発してから何も話さないから、心配してたわ」
凛なりに気を遣って、控えめに離陸したつもりであった。
「座高が5センチ縮まったわ。ランディングも一気にやるなら戻せるかもね💧」
「お…お望みならば」
(やっぱまだ速かったかぁ…💦)
反省してるところに通信が入った。
「凛さん、そろそろ鹿児島に着くころよね?」
「今からゆっくり降りるとこよ」
(お客様速度を考慮したとは、さすが天才)
通常なら、あと30分は早い。
「やはり霧島火山帯は、桜島が最初なのね?」
「はい、その原因となるマグマ溜まりは、鹿児島よりかなり南西に離れた位置にあるので、沖縄諸島の硫黄鳥島を噴火させます」
「無人島か。都合のいい火山があったものね」
「今冷却爆弾を、米軍が仕掛けてるけど、火口の直径が500mもあって、難航してるみたい。とにかく美優、何とかして桜島の破局噴火を止めて❗️PCに多香子の映像を映すから」
タブレットPCを取り出す美優。
「ほんとにソフトランディングなのね」
「座高が心配なら…」
「結構です!」(早っ💦)
(あれ?)
最初は雲かと思った美優。
空高く噴煙を上げる桜島が見えて来た。
初めて見る大きさに驚く。
(あんな大きなものを…いや、やるんだ!)
逃げ出したくなる心を、横たわる多香子の姿が引き戻した。
「アイ、噴煙には耐えられるのか?」
「ジェットエンジンと翼のファンを切り、上部のプロペラを出せば、計算上は大丈夫のはずです」
(はず?)
アイが曖昧な表現をするのは珍しい。
「佐久本さん、噴煙を避けて何とか火口に近付いてみるが、完璧には無理だ。それでもやれるか?」
「やれるかじゃなく、やるわ」
負けた…と思った凛。
(頼もしいじゃない)
火口内が3分の2ほど見える位置につけた。
激しい上昇気流の中、機体を水平に保つのは難しい。
(いや…やるんだったな!)
その研ぎ澄まされた全神経を、複数の計器や機体から感じる振動、噴煙の動きに集中する。
ヘルメットを取り、装置を頭に着ける美優。
タブレット画面の多香子に集中する。
闘いが始まった。
「うっ…これがあの山…」
多香子の記憶に入って直ぐに、今にも噴き上がりそうに、蠢き沸るマグマが見えた。
全身が焼ける様に熱い。
「ガァッ❗️」
耐えきれずに出る喘ぎ。
それを気にしている余裕はない凛。
(頑張れ…美優、お前ならできる!)
美優の視ている世界では、真っ暗な雨雲が渦巻き、激しい落雷が鳴り響いていた。
「我は龍神の遣い。燃える地の者よ、おまえの居場所はここじゃない! 生まれ出た源へ還れ❗️」
凄まじい稲妻が走り、辺り一帯を包み込んだ。
そこに…美優は見た。
白銀に燃える炎の中。
鋭い爪が光る両腕を構え、真っ直ぐ見定めるかの様に睨む、龍の姿を。
(龍神様…)
その目が一瞬緩み、温かみを感じさせた。
次の瞬間、龍は光の槍となり、荒れ狂うマグマへと突き刺さった。
「…ァァアアアッ❗️」
叫ぶと共に、我に返った美優。
「…痛ッ」
装置を外し、痛む目を手で押さえた。
「終わったのか⁉️」
「…た、多分…終わったわ」
それを聞いて、全エンジンを起動し、フルパワーで上昇した。
プロペラが折れて飛び散る。
間一髪で、新たな噴煙の直撃を免れた。
安全高度で自動操縦にし、硫黄鳥島へ向かう。
ヘルメットを取り、美優へ振り向く。
「大丈夫か⁉️」
Gに耐えきれず気絶した美優。
閉じたその瞳からは、血の涙が流れていた。
「美優…」
悲しみを噛み締め、見つめる凛。
二度と流れることは無い、そう思っていた涙が、凛の頬を伝っていた。
「凛さん、終わったの?美優は無事?」
「ああ…終わった。気絶はしているが無事よ」
「凛さん…泣いてるの?」
「バカな、なぜ私が泣く。それより、準備はできたのか?」
泣いてるのは分かった風花。
「ですよね。米軍が500人がかりで、ついさっき完了したわ。誘爆をお願いします」
硫黄の有毒ガスが立ち込める中、完全防備とは言え、足場もない火口で、命懸けの作業であった。
「了解。あと5分で着く。成功を祈ってろ」
祈りなど、子供の頃に無意味と知った凛。
自分の言葉に驚き…微笑んだ。
「いてて。なにその笑みは?似合わないわよ」
「気のせいだ。ちょっと待って」
胸ポケットからハンカチを出し、美優の涙を拭き取り、見えない様に握る。
「直ぐに標的に着く。悪かった、また背が縮んだな」
目に当てた掌には、真っ赤な血が付いている。
凛がそれを隠そうとしたことは分かった。
「凛さん…ありがとう」
「なに?気色悪い。いくわよ!」
噴火誘爆用のミサイルを火口にロックし、発射スイッチを押した…。
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