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〜南太平洋〜
空母ライオネルに着いたラブ。
設置されたトリノビーム砲を確認していた。
「またこれを使う日が来るとは…」
「ルイス艦長、できることなら私も使いたくはありません。しかし今となっては、破壊せずに保管していて良かったと思います」
「確かに。そして標的が人ではないことが、唯一正当化できる逃げ道ですね。しかしラブさん。整備した技師の話では、エネルギーが全く見当たらず、撃てないとのことでしたが…」
トリノ砲のエネルギー自体、彼らに分かるはずもなく、蓄えられるものでもない。
「トリノビーム砲は、遥か昔に私の祖先が、この星を外敵から守るために作り上げたもの。その要塞は、ロシアの海底で、再び眠りについています。これはHEAVENが作り上げた模倣品。海底から地球のエネルギーを使っていました」
チェコノヴァ、そしてレムとの戦闘を想い浮かべるラブ。
「大丈夫みたいね。時間が惜しい、直ぐに発射準備に掛かります。皆んなは艦内にいてください。通信にはこれを」
耳に着ける超小型通信機を渡す。
「ルイス艦長専用にセッティングされてます」
「分かりました。我々には何も出来ないですが、うまくいくことを祈ってます」
部下を連れて離れるルイス達。
砲座に乗り込むラブ。
(アイ、標的は南極の氷床。最適な座標を)
(了解しました、まずは氷床を動かしているマグマの放出を、次に火山帯の中のマグマ溜まりへ。ラブ様、連射する必要がありますが、かのうですか?)
火山の破壊を予定したが、調べると複数が大噴火をしており、根源を絶つことにした。
(やるしかない❗️)
(それから、タム山塊が間もなく臨界点を迎えそうです)
(いよいよね。結果は直ぐに教えて)
そこへ凛からの連絡が入る。
「ラブ、彼らは見事にやってくれたわ。桜島と阿蘇の噴火の危険性はなくなり、噴火させた硫黄鳥島の火山も、大した噴火はなく封じ込めた。作戦は成功よ❗️」
「良かった。皆んなには?」
「国中がお祭り騒ぎしてるわ。しかし…」
急に声のトーンが下がる。
「やはり…かなりキツイわよね。大丈夫かな」
「正直なところ、分からない。自分の限界なら分かるんだけど、見てられないって感じよ。この私がね〜。弱くなったかな」
「人間らしくなったってことよ、凛。私は今から南極を攻略するところ。彼らには負けらんないわね❣️」
「シッカリ頼むわよ!ラブの成功は、3人の励みになるから」
通信を切り、トリノ砲へ両手を添える。
「ルイス艦長、いったいどうやって…えっ⁉️」
目にした光景に、言葉が止まる。
ラブの両手首に光のリングが現れ、トリノ砲が起動を始める。
目を閉じた意識の中に、アイから標的の位置情報が送られて来た。
リングの光が広がり、トリノ砲を包み込んだ。
(標的確認、コスモ砲発射❗️)
「ギュイィーンッ!…バッ!ギュゥォーン❗️」
包み込んでいた光が、砲門から空へ放たれた。
成層圏辺りまで上がり、そこから弧を描いて降下し、南極の海に面した氷床へ突き刺さる。
その様子を、監視衛星画像で見ていた各国の首脳陣から、響めきの声が上がる。
ポッカリと空いた大きな穴。
数秒して、そこから大量のマグマが噴き出し、数百メートル先の海へと落ちる。
「やった❗️」「おぉ❗️」
世界中で、感嘆の声と拍手が沸き起こる。
しかし、まだ終わってはいない。
(標的確認…クッ…)
再び広がった光が、一瞬弱まりかける。
(ラブ様、撃つのです❗️)
グラついた意識を、アイが呼び覚ます。
(クソッ!ゥヲォォォオ…発射❗️)
「バッ!ギュゥォーン❗️」
2発目は光弾となり、氷床と更に火山の岩肌を突き抜け、地底にあるマグマの海で拡散した。
大量のマグマが一瞬にして無となり、真空化した空間に、火山の地盤が引きずり込まれる様に崩れ落ちていく。
噴火が止み、幾つかの火山が崩壊した。
ドーム状に溶けた氷床は、3kmに及ぶ厚さが勝り、びくともしなかった。
「ラブ!成功よ❗️さすがね…えっ…ラブ?」
通信機に反応がない。
「アイ、ラブは大丈夫なの⁉️」
「かなりの生体エネルギーを消費したはずですが、大丈夫です」
「良かった…凛さん、次の場所へ」
そう言う美優の顔色は、とても次をやれるとは思えなかった。
しかし…追い討ちをかける様に、風花からの指示が届いた。
「皆んな、霧島を抑えた影響で、長崎から福井の日本海側にかけて、白山火山帯の動きが活発化しました。分析では、長崎の雲仙普賢岳が最初です。既に噴煙が上がっているので、急いでください」
「しかし❗️」
「凛さん、行きましょ。私なら大丈夫」
「チッ!らしくない笑顔なんて見せるな。了解、今から向かうわ」
始めた以上、後戻りはもちろん、中断も出来ないことは、最初から分かっていた。
旋回し、雲仙を目指す。
〜TERRA〜
多香子と晋也は、何とか回復して、ラブの成功を喜んでいた。
「2人とも、次は雲仙普賢岳よ!」
「よし!やるか、多香子」
「風花、映像を見せて」
頭に装置を着け、再び席へ座る2人。
(やるしかないんだ!)
「アイ、お願い」
(ごめんね多香子、晋ちゃん。頑張って!)
弱気な顔は絶対に見せてはいけない。
例え3人が、どうなろうとも。
そうラブに誓った風花であった。
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