【6】激闘

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〜南太平洋〜 空母ライオネルに着いたラブ。 設置されたトリノビーム砲を確認していた。 「またこれを使う日が来るとは…」 「ルイス艦長、できることなら私も使いたくはありません。しかし今となっては、破壊せずに保管していて良かったと思います」 「確かに。そして標的が人ではないことが、唯一正当化できる逃げ道ですね。しかしラブさん。整備した技師の話では、エネルギーが全く見当たらず、撃てないとのことでしたが…」 トリノ砲のエネルギー自体、彼らに分かるはずもなく、蓄えられるものでもない。 「トリノビーム砲は、遥か昔に私の祖先が、この星を外敵から守るために作り上げたもの。その要塞は、ロシアの海底で、再び眠りについています。これはHEAVENが作り上げた模倣品。海底から地球のエネルギーを使っていました」 チェコノヴァ、そしてレムとの戦闘を想い浮かべるラブ。 「大丈夫みたいね。時間が惜しい、直ぐに発射準備に掛かります。皆んなは艦内にいてください。通信にはこれを」 耳に着ける超小型通信機を渡す。 「ルイス艦長専用にセッティングされてます」 「分かりました。我々には何も出来ないですが、うまくいくことを祈ってます」 部下を連れて離れるルイス達。 砲座に乗り込むラブ。 (アイ、標的は南極の氷床。最適な座標を) (了解しました、まずは氷床を動かしているマグマの放出を、次に火山帯の中のマグマ溜まりへ。ラブ様、連射する必要がありますが、かのうですか?) 火山の破壊を予定したが、調べると複数が大噴火をしており、根源を絶つことにした。 (やるしかない❗️) (それから、タム山塊が間もなく臨界点を迎えそうです) (いよいよね。結果は直ぐに教えて) そこへ凛からの連絡が入る。 「ラブ、彼らは見事にやってくれたわ。桜島と阿蘇の噴火の危険性はなくなり、噴火させた硫黄鳥島の火山も、大した噴火はなく封じ込めた。作戦は成功よ❗️」 「良かった。皆んなには?」 「国中がお祭り騒ぎしてるわ。しかし…」 急に声のトーンが下がる。 「やはり…かなりキツイわよね。大丈夫かな」 「正直なところ、分からない。自分の限界なら分かるんだけど、見てられないって感じよ。この私がね〜。弱くなったかな」 「人間らしくなったってことよ、凛。私は今から南極を攻略するところ。彼らには負けらんないわね❣️」 「シッカリ頼むわよ!ラブの成功は、3人の励みになるから」 通信を切り、トリノ砲へ両手を添える。 「ルイス艦長、いったいどうやって…えっ⁉️」 目にした光景に、言葉が止まる。 ラブの両手首に光のリングが現れ、トリノ砲が起動を始める。 目を閉じた意識の中に、アイから標的の位置情報が送られて来た。 リングの光が広がり、トリノ砲を包み込んだ。 (標的確認、コスモ砲発射❗️) 「ギュイィーンッ!…バッ!ギュゥォーン❗️」 包み込んでいた光が、砲門から空へ放たれた。 成層圏辺りまで上がり、そこから弧を描いて降下し、南極の海に面した氷床へ突き刺さる。 その様子を、監視衛星画像で見ていた各国の首脳陣から、(どよ)めきの声が上がる。 ポッカリと空いた大きな穴。 数秒して、そこから大量のマグマが噴き出し、数百メートル先の海へと落ちる。 「やった❗️」「おぉ❗️」 世界中で、感嘆の声と拍手が沸き起こる。 しかし、まだ終わってはいない。 (標的確認…クッ…) 再び広がった光が、一瞬弱まりかける。 (ラブ様、撃つのです❗️) グラついた意識を、アイが呼び覚ます。 (クソッ!ゥヲォォォオ…発射❗️) 「バッ!ギュゥォーン❗️」 2発目は光弾となり、氷床と更に火山の岩肌を突き抜け、地底にあるマグマの海で拡散した。 大量のマグマが一瞬にして無となり、真空化した空間に、火山の地盤が引きずり込まれる様に崩れ落ちていく。 噴火が止み、幾つかの火山が崩壊した。 ドーム状に溶けた氷床は、3kmに及ぶ厚さが勝り、びくともしなかった。 「ラブ!成功よ❗️さすがね…えっ…ラブ?」 通信機に反応がない。 「アイ、ラブは大丈夫なの⁉️」 「かなりの生体エネルギーを消費したはずですが、大丈夫です」 「良かった…凛さん、次の場所へ」 そう言う美優の顔色は、とても次をやれるとは思えなかった。 しかし…追い討ちをかける様に、風花からの指示が届いた。 「皆んな、霧島を抑えた影響で、長崎から福井の日本海側にかけて、白山火山帯の動きが活発化しました。分析では、長崎の雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)が最初です。既に噴煙が上がっているので、急いでください」 「しかし❗️」 「凛さん、行きましょ。私なら大丈夫」 「チッ!らしくない笑顔なんて見せるな。了解、今から向かうわ」 始めた以上、後戻りはもちろん、中断も出来ないことは、最初から分かっていた。 旋回し、雲仙を目指す。 〜TERRA〜 多香子と晋也は、何とか回復して、ラブの成功を喜んでいた。 「2人とも、次は雲仙普賢岳よ!」 「よし!やるか、多香子」 「風花、映像を見せて」 頭に装置を着け、再び席へ座る2人。 (やるしかないんだ!) 「アイ、お願い」 (ごめんね多香子、晋ちゃん。頑張って!) 弱気な顔は絶対に見せてはいけない。 例え3人が、どうなろうとも。 そうラブに誓った風花であった。
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