【6】激闘

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そして。 「タム山塊が噴火します」 衛星で監視していた、アイが告げた。 国会議事堂に集まった各省庁幹部と首相には、ラブがタム山塊の事実を知らせていた。 その彼らと、アメリカ軍内に緊張が走る。 設置した深海カメラの各映像と、上空からのドローン映像が映し出されていた。 一瞬、画像が揺れた後、山頂を中心に、広大な海底が一気に100mほど隆起し、海底の映像が消えた。 山頂から約500m上方。 無人潜水艦周囲に設置した全方向カメラが、その様子を捉えていた。 タム山塊山頂から周囲数kmが、破局噴火により爆発的に破壊され、灼熱のマグマが盛り上がるように近付く。 その衝撃波に押し流されながら、無人潜水艦が爆発するのが、ほんの一瞬だけ見えた。 (ダメか⁉️) ジェラルドの艦員だけでなく、内地で映像を見ていた者も、思わず身を沈めて何かに掴まり、衝撃に備える。 ドローン映像では、広範囲で極僅かに海の色が変化したかの様に見えた。 と思った瞬間。 その中心から噴き上がった水柱の直撃を受け、画像が消える。 ジェラルドからはその先端が少し見え、次に来る津波を想像し、思わず後ずさる者もいた。 戦闘機のパイロット達は、ミサイル発射ボタンに添えた指が震え、ヘルメットの中で、冷たい汗が頬を伝う。 沈黙の1秒1秒が、異常に長く感じられた。 息を止めていた者達が、呼吸を再開した頃。 ヴェロニカの装置が成功した事を、確信した。 「こちら空母ジェラルド艦長のミッチェル。海面に異常なし。繰り返す、海面に異常なし。成功です❗️」 「ウォオー❗️」 言葉にならない叫び声が上がる。 抱き合って喜び合う者たち。 〜空母ライオネル〜 「ラブ様、タム山塊の火山活動が収まりました。ヴェロニカ様の『高速爆発抑制剤散布装置』は成功しました。爆弾の衝撃波は1500mの水圧で抑えられ、海上には僅かに水柱が現れたのみ。水蒸気爆発は発生しませんでした」 「そう…良かった。助かったわ〜ほんとに。奇跡的…と言ったらヴェロニカに怒られるわね」 正直なところ、ミサイルで巨大な津波を、どの程度破壊できるか、そしてその被害を考えていたラブ。 奇跡と呼ぶに相応(ふさわ)しい成功と、ヴェロニカの信頼が確かなものであった喜び。 複雑な心境ではあるが、また一つ脅威が消えたことは、ラブの重荷(おもに)が減ったことに違いはなかった。
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