【7】奇跡の代償

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特殊な周波数と、何重ものセキュリティーシステムを、ものともしない技術力。 思い当たるのはただ1人。 「あらあらラブ、あなたが負けを認めるなんて、らしくないわよ」 「ヴェロニカ⁉️」 「あなたは1人で戦って来たんじゃない。それくらいよく分かってるはず。仲間の存在と、その絆の強さを」 「こんな時に侵入するとは、いったい何を企んでるんだ❗️」 NASAのエヴァン長官が喰らいつく。 「こんな時だから、来てあげたんじゃない」 「何だと⁉️」 「ラブ、南極は見事だったわね。実は近くに仲間がいてね。もう諦めていたが…おかげで助かったわ」 「チリの秘密基地ね」 「あら、さすがラブ。もう見つかってたとは、秘密基地とは呼べないわね。しかし、あれだけのコスモエネルギー。使えてもあと一回…でしょ?」 全てを知り尽くしている旧友。 更には、世界最高頭脳の持ち主。 「いいから、さっさと出て行きなさい」 今は言い争う状況ではない。 破滅の時が刻一刻と近付いていた。 「えらく酷い言われ様ね。太平洋を救ってあげたのに。…まぁ、どうでもいいわ。正直なところ、あんなに上手くいくとは思ってなかったから」 「ヴェロニカ、タム山塊については、本当に助かったわ。あの装置が無かったら、今頃はこうしてはいられなかったはず」 「確かに…そうだな。皆さん、まずは彼女に礼を言うのが先だ。ヴェロニカさん、太平洋沿岸の諸国を代表して、礼を言わせてもらう。本当にありがとう」 スミス大統領が頭を下げた。 「きっと頭でも下げてるんだろうけど、私はロシア人よ。礼など無用。私は自分の組織の仲間達を救いたかっただけだから。今回もね」 「今回…も?」 誰もが聞き返した。 「今、世界中の危険な火山に、私の組織の輸送機が向かってるわ。例の装置を満タンに積んでね」 「ヴェロニカ、まだあったの?あの装置が?」 「あれは、元々姉のチェコノヴァが考え出したもの。私はそれにちょっと手を加えただけよ。チェコノヴァが死んでから、私は祖国の同志たちに、それを作らせていた。勘違いしないでよ、あなた達のためじゃなく、あなた達の核から、仲間を守るためだから」 世界がざわつき始めた。 「まさか、それで火山の爆発を止めてくれると言うのか?私達を守ってくれると言うのか⁉️」 「スミス大統領…だっけ?ちょっと違うわね。世界中で火山が破局噴火したら、あなた達だけじゃなく、私達も生きていられない。ただそれだけのことよ。特にアンタを守る気はさらさらない。必ず…殺す。タム山塊で無抵抗な仲間を爆撃した恨みは、必ず晴らす❗️」 決して強がりや脅しではない。 それが本心からの言葉であることは、ラブには分かった。 敵であることに変わりはない。 「しかし、あの規模でイエローストーンを止められるのか?」 「ちゃんと聞いて無かった様ね。ちょっと手を加えたわ。あの程度?タム山塊の場合は、1500mの深海だったから、の噴火しか抑えられなかっただけよ。地上なら、5基も有れば十分よ」 (ラブ様、1500mの水圧下であの威力。ヴェロニカ様の言葉に、誇張はありません) ラブの頭脳に、アイのが入った。 「ラブ。アンタには命を助けて貰った恩がある。キラウエアに集中しろ。後は引き受ける」 「ヴェロニカ❗️」 「これで貸し借りは無しだ。次に会って邪魔なら、殺す。各国に告ぐ。仲間の輸送機が各ポイントに着くから、撃つなよ」 言い捨てて、通信から抜けた。 「皆さん、悩んでる猶予も選択の余地もありません。着き次第、彼らの指示に従って装置をセットして下さい」 「しかし、罠では?」 「ヴェロニカじゃなく、私を信じてくれればいい❗️それに、彼女はそんな姑息な罠を仕掛けたりは絶対にしない❗️」 「よし、皆さん。ラブさんの判断に間違いはない。信じましょう。今はそれしか道は無い」 皮肉にも全世界は、テロ組織HEAVENの助けに身を任せるしか、生き残る(すべ)が無かったのである。
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