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ラブが静かに語り始めた。
「ヴェロニカ、そして世界各国の皆さん。
共通の危機に直面した時。
大きな自然災害に見舞われた時。
世界は国境を越えて一つになれる。
敵味方の隔たりさえも無くなる。
偽善や、思惑あってのものだとしても、
その行動や意識にこそ、大切な意味がある。
例えほんの僅かな瞬間でもいい。
明日には元に戻るものでもいい。
その種がいつか、実を結ぶかも知れない。
和平への足がかりになるかも知れない。
皆さんの尊い意思と、その行いが、
次の世代、その次の世代へと繋がり、
新しい世界が見えて来ると信じています。
それがこの地球の人類。
だから私は全ての人を愛し、守りたい。
今、その想いが、間違いじゃないと、
希望はあると確信しました。
皆さん一緒に、今の、そして未来の世界を守りましょう❗️本当にありがとう」
言い終えて、通信を切った。
(私が今すべきことは、コイツに勝つこと❗️)
衰えていた力が、一気に再生していく。
これこそが、ラブの原動力なのであった。
トリノビーム砲に両手を添える。
砲台が動き出し、手首のリングが光を増す。
(ラブ様、水蒸気の高さが増しました。噴火が近いと思われます)
(噴火する前に、地中のマグマを撃ちます)
「凄い…あんなに弱りきっていたのに…」
増していく光を見ながら、ルイスが呟いた。
(これが、ラブさんの力)
通信機のスイッチを入れた。
「標的座標確認。アイ、経路に障害は?」
「問題ありません」
「グッ…まだ、もっとパワーを❗️」
苦しさを跳ね返し、光が更に増していく。
「ラブ様、危険です」
「まだ…もう少し…もっと、もっと❤️🔥❗️」
足首にも光輪が現れ、額に王家の紋章が浮かびあがる。
「ラブ様⁉️」
「コスモ砲、発射💥❗️」
「バッ❗️ビュギュィィーン✨💥✨」
凄まじい光の球が、長い尾を引きながら空へと撃ち出された。
成層圏間際で鋭く曲がり、ほぼ垂直に降下し、キラウエア火山の火口へと突き刺さった。
「ヅヴァババーン💥💥」
火口周辺が空圧に砕け散る。
「噴煙と蒸気が…消えた」
モニターを見ていたスミス大統領が呟く。
と、次の瞬間。
「ヅッゴゴガガッ、シューン❗️」
僅か3秒ほどで、キラウエア火山が地中へと消え、海水が一気に流れ込んだ。
「凄いな…あの山より巨大なマグマ溜まりを消し去ったと言うことか…はっ❗️ラブさん!ラブさんは無事か⁉️」
見ていた全員が、ラブと対峙していた相手の巨大さと、想像以上のパワーに驚愕した。
「スミス大統領、ライオネル艦長のルイスです。気絶はしていますが、大丈夫だと思います。今から医療室に運び…えっ?」
ルイスの腕の中で、微かにラブが動いた。
「火山は…?」
「ラブさん⁉️安心してください、大成功です」
「よかっ…た。ルイス…直ぐに戻らないと…」
どう見ても、こんなに衰弱しきった体で、ヘリの操縦など無理である。
「ヘリへ…お願い…日本に帰らないと…」
「そんなこと❗️この艦にいる限り、私の指示に従ってもらいます。こんなぼろぼろな状態で帰すわけには…」
(ルイス艦長様、TERRAのアイです)
「えっ?何だ?」
(ルイス、心配しないで)
「ラブさんまで?」
頭の中に聞こえる声に戸惑う。
(ラブ様は。私が遠隔操縦で、安全に連れ帰ります。帰る必要があるのです)
「スミス…大統領…ラブです。自動操縦で、急いで日本へ…帰らないと。…いけない。ルイスを責めないで…ください」
「ラブさん、ダメですって!」
「スミス艦長。彼女が必要と言うなら、本当に必要なんだろう。日本は火山列島だ。闘っている仲間が待っているに違いない。ラブさんの言う通りにしてあげなさい」
「あり…がとう。大統領」
「バカな、礼を言うのはこっちだ!ハワイの皆んなは、君のおかげで全員助かった。ありがとう。本当にありがとう…」
スミスの目から、涙が溢れていた。
「分かりました。ヘリへ乗せます」
「ありがとう…艦長」
「ラブ、イタリアのエトナ山は、何とか上手くいったわよ。後はこの私に任せて、さっさと帰りなさい」
こんなに弱ったラブの声を、初めて聞いたヴェロニカ。
荒れた極寒のロシアの海に飛び込み、自分達を救ってくれた時の姿を思い出していた。
「ヴェロニカ…あなたは私の…命を救った。貸し借り…は無し」
「バカ❗️当たり前よ。いいからもう喋るな」
とても聞いていられず、通信を切った。
(これでもう、気にしなくていいってことね)
恐らくラブは、例え無理でも最後まで諦めず、エトナ山を撃ったはず。
それは自殺行為。
キラウエア火山に全力を出し切れたのは、自分のことを信じていたから。
それが分かってしまう自分。
まだラブを捨て切れていない自分に、ラブが身を持って示した本当の別れ。
(これが最後ね。戦線布告…か。面白い❗️)
ようやく吹っ切れたヴェロニカ。
無意識な笑みが浮かんでいた…
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