【7】奇跡の代償

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ラブが静かに語り始めた。 「ヴェロニカ、そして世界各国の皆さん。 共通の危機に直面した時。 大きな自然災害に見舞われた時。 世界は国境を越えて一つになれる。 敵味方の隔たりさえも無くなる。 偽善や、思惑あってのものだとしても、 その行動や意識にこそ、大切な意味がある。 例えほんの僅かな瞬間でもいい。 明日には元に戻るものでもいい。 その種がいつか、実を結ぶかも知れない。 和平への足がかりになるかも知れない。 皆さんの尊い意思と、その行いが、 次の世代、その次の世代へと繋がり、 新しい世界が見えて来ると信じています。 それがこの地球(ほし)の人類。 だから私は全ての人を愛し、守りたい。 今、その想いが、間違いじゃないと、 希望はあると確信しました。 皆さん一緒に、今の、そして未来の世界を守りましょう❗️本当にありがとう」 言い終えて、通信を切った。 (私が今すべきことは、コイツに勝つこと❗️) 衰えていた力が、一気に再生していく。 これこそが、ラブの原動力なのであった。 トリノビーム砲に両手を添える。 砲台が動き出し、手首のリングが光を増す。 (ラブ様、水蒸気の高さが増しました。噴火が近いと思われます) (噴火する前に、地中のマグマを撃ちます) 「凄い…あんなに弱りきっていたのに…」 増していく光を見ながら、ルイスが呟いた。 (これが、ラブさんの力) 通信機のスイッチを入れた。 「標的座標確認。アイ、経路に障害は?」 「問題ありません」 「グッ…まだ、もっとパワーを❗️」 苦しさを跳ね返し、光が更に増していく。 「ラブ様、危険です」 「まだ…もう少し…もっと、もっと❤️‍🔥❗️」 足首にも光輪が現れ、額に王家の紋章が浮かびあがる。 「ラブ様⁉️」 「コスモ砲、発射💥❗️」 「バッ❗️ビュギュィィーン✨💥✨」 凄まじい光の球が、長い尾を引きながら空へと撃ち出された。 成層圏間際で鋭く曲がり、ほぼ垂直に降下し、キラウエア火山の火口へと突き刺さった。 「ヅヴァババーン💥💥」 火口周辺が空圧に砕け散る。 「噴煙と蒸気が…消えた」 モニターを見ていたスミス大統領が呟く。 と、次の瞬間。 「ヅッゴゴガガッ、シューン❗️」 僅か3秒ほどで、キラウエア火山が地中へと消え、海水が一気に流れ込んだ。 「凄いな…あの山より巨大なマグマ溜まりを消し去ったと言うことか…はっ❗️ラブさん!ラブさんは無事か⁉️」 見ていた全員が、ラブと対峙していた相手の巨大さと、想像以上のパワーに驚愕した。 「スミス大統領、ライオネル艦長のルイスです。気絶はしていますが、大丈夫だと思います。今から医療室に運び…えっ?」 ルイスの腕の中で、微かにラブが動いた。 「火山は…?」 「ラブさん⁉️安心してください、大成功です」 「よかっ…た。ルイス…直ぐに戻らないと…」 どう見ても、こんなに衰弱しきった体で、ヘリの操縦など無理である。 「ヘリへ…お願い…日本に帰らないと…」 「そんなこと❗️この艦にいる限り、私の指示に従ってもらいます。こんなぼろぼろな状態で帰すわけには…」 (ルイス艦長様、TERRAのアイです) 「えっ?何だ?」 (ルイス、心配しないで) 「ラブさんまで?」 頭の中に聞こえる声に戸惑う。 (ラブ様は。私が遠隔操縦で、安全に連れ帰ります。帰る必要があるのです) 「スミス…大統領…ラブです。自動操縦で、急いで日本へ…帰らないと。…いけない。ルイスを責めないで…ください」 「ラブさん、ダメですって!」 「スミス艦長。彼女が必要と言うなら、本当に必要なんだろう。日本は火山列島だ。闘っている仲間が待っているに違いない。ラブさんの言う通りにしてあげなさい」 「あり…がとう。大統領」 「バカな、礼を言うのはこっちだ!ハワイの皆んなは、君のおかげで全員助かった。ありがとう。本当にありがとう…」 スミスの目から、涙が溢れていた。 「分かりました。ヘリへ乗せます」 「ありがとう…艦長」 「ラブ、イタリアのエトナ山は、何とか上手くいったわよ。後はこの私に任せて、さっさと帰りなさい」 こんなに弱ったラブの声を、初めて聞いたヴェロニカ。 荒れた極寒のロシアの海に飛び込み、自分達を救ってくれた時の姿を思い出していた。 「ヴェロニカ…あなたは私の…命を救った。貸し借り…は無し」 「バカ❗️当たり前よ。いいからもう喋るな」 とても聞いていられず、通信を切った。 (これでもう、気にしなくていいってことね) 恐らくラブは、例え無理でも最後まで諦めず、エトナ山を撃ったはず。 それは自殺行為。 キラウエア火山に全力を出し切れたのは、自分のことを信じていたから。 それが分かってしまう自分。 まだラブを捨て切れていない自分に、ラブが身を持って示した本当の別れ。 (これが最後ね。戦線布告…か。面白い❗️) ようやく吹っ切れたヴェロニカ。 無意識な笑みが浮かんでいた…
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