【7】奇跡の代償

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〜TERRA地下基地〜 帰り着いたラブは、専用回復室の装置の中で12時間眠り続けた。 それ程にダメージは大きかったのである。 生体エネルギーは危険レベルを切り、自己回復する力すら残っていなかった。 日本を除き、世界各地の火山は、イエローストーンを最後に、収束を迎えた。 その功績に、ヴェロニカの名前はない。 軍の中でさえ、極秘扱いとなっていた。 ただ、彼女が火山により死亡したと言う噂だけは、世界中に広まっていったのである。 そして日本では、富士火山帯との最後の闘いが始まっていた。 比嘉、新垣、佐久本の3人も、TERRAにある回復室により、何とかここまで辿り着いた。 ただ…持病に無理が重なり、佐久本の余命は深刻な状態である。 しかし、彼女の持つ『龍神の力』がなければ成功はなく、佐久本自身は最初から覚悟を決めていた。 「多香子、硫黄島火山に集中して」 真剣な顔で月島風花が指示する。 佐久本美優の状態を(かんが)みると、残された時間は貴重である。 「よし、やるぞ!多香子」 うなずき合う2人。 「美優、スタンバイOKかな?」 「さっさとやりましょ」 「相変わらず素っ気無いんだから、もう!」 「ハハッ多香子、今更言うなよな」 苦しいのを我慢し、無理をして普通に振る舞っている美優。 そのことは、2人にも分かっている。 だから涙を堪え、敢えて普通に会話していた。 (この子たちは、どれだけ優しいのよ…) ラブと闘って仲間になるまで、優しい世界を知らずに生きて来た新咲凛。 TERRAの69階にある専用居住フロアで、いまでは常に彼らの曲を流していた。 「月島様、新垣様のバイタルが異常です」 安定してきた2人より、危険な美優に集中していた風花。 「どうして⁉️…これは?」 脳波がいつもと違う波形を示していた。 直ぐに多香子に駆け寄り、直接自分の目と耳と手で確かめる。 「…うぅ…どうして?…おか…しい」 苦しそうに呟く多香子。 その記憶を追いかける晋也も、今迄と違った。 「アイ、強制解除❗️」 「分かりました」 頭の装置から2人の意識に入り、覚醒を促す。 数秒後、意識の戻った多香子と晋也。 「多香子、どうしたんだ?風花の予想通り、噴火してたじゃないか」 「違うのよ、今までの噴火とは全然違う!」 「破局噴火じゃない…ってこと?」 「多分…今までの様な恐怖は感じなかった」 「慣れたからじゃないか?多香子」 「アイ!」 風花の疑念に応えるアイ。 焼山・妙高山・八ケ岳・箱根山・愛鷹山・三原山・硫黄島・八丈島・三宅島・大島など、噴火の可能性が高い火山の分析データが、モニターに映る。 「次に考えられるのは…大島だけど、こんな規模なら過去にも何度かあるわ」 「風花、美優の話しでは、小笠原諸島近くにあるマグマ溜まりは、脅威的ではないそうよ」 凛の声が割り込む。 「多香…子、忘れて…いるわ」 弱々しい美優の声が聞こえた。 その時…TERRAが揺れた。 「地震?アイ、震源地は?」 「北緯35° 21'、東経138° 43'。マグニチュード4.5、震源の深さ約20km。出します」 モニターに地図が映り、座標が示された。 「そ、そんなバカな⁉️」 座標を聞いた時点で分かっていた風花。 「これって…」「富士山❗️」 多香子と晋也が同時に叫んだ。 緊急速報を告げる警報が鳴り、アイがテレビを映し出した。 「つい先程、静岡県東部を中心に地震がありました。地震の規模を示すマグニチュードは4.0〜4.5、震源地は…えっ?あっ…失礼しました。震源地は、富士山の地下約20km。各地の震度は…」 キャスターの動揺が見ていて分かる。 それは風花も同じであった。 「そんなこと…あり得ない❗️本土の地下にマグマ留まりなんて見つかってないわ!」 その声に、冷静な言葉が返って来た。
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