【8】決着・そして…

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【8】決着・そして…

1週間後 〜千代田区霞ヶ関〜 破壊された各省庁舎の修復や建設が、急ピッチで進められている。 近くの日比谷公園には、襲撃で亡くなった者たちの慰霊碑が造られ、除幕式が執り行われた。 眉村首相を始め、新しく着任したメンバーや家族が集まり、手を合わせ冥福を祈った。 それに合わせて、公園内の日比谷野外音楽堂では、チムグクルのミニライブが、政府主催で開催されていた。 急な開催にも関わらず大勢の観客が集まり、涙を流しながらも、歓声と拍手を贈る。 美優のいた空間から、三線の音色は消えた。 代役は可能であったが、2人がそれを拒んだ。 そこは美優の場所であり、今でも彼女はそこで三線を奏でている、と言う多香子と晋也。 2人の心には、記憶の音色が聴こえていた。 あれから2人のから能力は消え、多香子と晋也はそれを喜んだ。 人の未来や過去など、視たくはない。 また、視るものでもない。 世界は、火山の影響で色々と変わってしまったが、それなりに日常を取り戻しつつあった。 しかし、あの圧倒的な自然の力を、二度と忘れることは無いであろう。 世界が一つになった時の人類の力も。 国境を越えて感じた、人としての絆も。 チムグクルは、今や世界中の人気となり、マネージャーの木村香織は、猛烈に忙しく動き回っていた。 TERRAの受付嬢として、英語、フランス、ドイツ、中国、韓国など、語学に堪能な彼女を抜擢した、ラブの狙い通りである。 「アイ、アフリカは私無理だから回すので、話し聞いといて、お願い!」 「了解しました、木村様」 「えっと、次は…ベネズエラ?いったい何語なのよ💦…と言うか、どこにあるのよ💧もうっ!アイ様ぁ〜」 アイも忙しく働いていた💦 その頃ラブ達は、富士山噴火の折に、若干の被害を受けた山梨県忍野(おしの)村に来ていた。 陸上自衛隊北富士駐屯地が近く、大勢の隊員が、最初の軽い噴火で飛んで来た岩石や、壊れた家などの片付けをしている。 「ラブさん!こんなところまでわざわざ」 「ご苦労様。貴方は…電話で話した工藤隊長ね?物資や重機は足りてるかな?」 「TERRAから沢山の援助を、ありがとうございます。おかげ様でもうほとんど片付き、避難していた村人達も戻って来ています」 ラブは昨日、一般用携帯を使って、忍野(おしの)村対策本部へ伺う旨を連絡していた。 「それは良かった。電話で話した通り、陥没で新しい火口らしき場所ができたと聞き、確認に来ました」 「そうでしたね。え〜と…」 案内役を探して、辺りを見渡す工藤。 「隊長、私で良ければ、丁度手が空いたので、ラブさん達を車で案内します」 「君は…」 「富士駐屯地から派遣された、水戸(みと)です。ジープをお借りしても?」 「ああ、あれを使ってくれ、キーは付いているから。すまないが、助かるよ」 「では、ラブさんと…」 「彼女はマネージャーの新咲(しんざき)(りん)です。水戸さん、よろしくお願いします」 「ジープで申し訳ないですが、山道の奥なので、我慢してください」 「大丈夫、問題ありません。では工藤隊長、忙しいところをお邪魔しました。失礼します」 「こちらこそ、あの…良かったら…」 急に小声になり、内ポケットから手帳を取り出し、裏表紙にしてマジックペンを差し出した。 「家族で大ファンでして…💦」 「公務中は困ります」 すかさず、凛が止めに入る。 「凛、まぁ…いいじゃない💦」 受け取って、ササッとサインして返した。 「ありがとうございます❣️」 (敬礼してどうすんのよ💧) 凛の心の呟きをラブ。 (ファンは大切に…ね💦) その頭の中へ、(なだ)めて機嫌をとる。 「で…では、行きましょうか」 水戸の運転するジープで、山の中へ向かった。
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