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素知らぬ顔で、ジープに戻るラブ。
「コンコン」
「どうかしましたかぁ〜」
車から出てこない水戸に、助手席の窓ガラスを叩いて声を掛ける。
慌てて出て来る水戸。
「いやぁ…柵の鍵を忘れたみたいです」
一見無防備なラブ。
その距離は20m余り。
凛とラブの距離は30m近い。
ラブが殺気に集中し、凛が腰に付けたグリップを両手に握っていることなど知らない。
「おっと」
水戸が車のキーを落とし、しゃがむ。
「行くぞ❗️」
一斉に5人が現れ、サイレンサー付きの銃が放たれる。
「バシュバシュバシュ…」
超人的な動体視力と反射神経を持つラブにとって、20mは十分遠い。
必要最小限の動きで、命中する弾をかわす。
「なに⁉️」
驚いたところに、人とは思えぬ低さと速さで凛が迫る。
「バカな⁉️」
咄嗟に銃を向けるが…
「シュシュン…シュヴァ!」
「グァアッ❗️」
握ったグリップから伸びた刃が、瞬く間に2人を斬り飛ばし、3人目へ疾る。
闇の世界で、最強と恐れられた暗殺者。
双剣の箔・傅凛。
ラブからわざと離れながらも、攻撃に足る距離を保っていた。
難なく3人目を切り伏せた時。
「動くな❗️」
水戸が、銃口をラブに向けた。
「クッ…まさか⁉️」
それには気付かなかった凛。
(しまった…)
ラブが告げた5人と2人。
2人の内の1人は狙撃手であり、もう1人が水戸であった。
車を挟んで2m足らず。
いくらラブでも避けられはしない。
狙撃手が殺られたと判断した水戸。
そこからは撃てぬ様に、ラブを盾にしていた。
「ザルハバール・ミゲル・トルヘフ」
平然とした声でラブが呟く。
「ほぅ…私のフルネームを覚えていてくれるのは光栄だが、もう終わりだ。まさかこんなに簡単に罠にはまるとはな」
特殊メイクのパーツと、カツラを外した。
「銀行マン橋詰和馬の次は自衛隊とは…。勘違いするな、ハメたのはお前じゃなく、私の方だ」
「何だと?」
ミゲルが、本物の顔で目を細めた。
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