通り過ぎない通り雨

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脱がしてどうのこうのはともかくと、悪魔は気持ちを切り替えると 両手を敷布団へとかざして叫んだ。 「雨よ去れ!!」 すると敷布団と床の水分が生き物のようにうねって浮かび上がり 逃げるようにして、開け放したままの窓から外へと飛んでいった。 布団どころか床さえも乾き、布団にいたってはふっくらとしている。 美人の彼が敷布団に触れてみると、晴れた日差しの下で干したように 少しの熱を帯びていた。 「すごい......なにをしたんですか?」   彼はもはや尊敬のまなざしで悪魔をみつめた。 「言ったとおりだ、雨を布団から逃がした」 「瞬間移動したり。魔法使いに会えるなんて......夢みたいだ」 「魔法使いじゃねえよ、悪魔だ」 「えぇぇっ!? 僕の首とか回しちゃうんですか!」 「回さねえよ!」 1973年に公開された洋画で、悪魔は恐ろしいものだと 人々に認識されつつあった時期だ。 「とにかく、ありがとうございます......!本当に助かりました」 彼は折れそうに身体を曲げてお辞儀をしてきた。 悪魔は窓を閉め、敷布団をベッドへと敷きながら聞いてみる。 「おまえ、年はいつくだ?」 「え?17歳です」 「なんだ、思ってたより若いな、襲える年齢じゃねえな」 「えぇっ?」 「あぁ、襲うって、押し倒すって意味な、それこそベッドに」 「あ、そっちですか......」 彼は綺麗な顔をしかめて考え込んだ。
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