通り過ぎない通り雨

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「僕、男だって言いましたよね?」 「聞いた」 「それなのに、ですか?」 「女でも男でも俺は平気だ」 「僕は女でも男でも平気じゃないですよ」 「おまえのほうが難しいな。 まあ、無理矢理にやったりはしない、安心しろ」 「ほんとですか?お礼を身体で払えとか言いませんか?」 「そんな姑息なこと言わねえよ!」 と、言っているうちに、彼がフラリと身体を揺らして倒れかけて 自然と悪魔へと寄りかかってしまった。 「ごめんなさい、疲れちゃいました。僕、身体が弱くて」 「どうみても丈夫そうにはみえねえよ、ほら、寝とけ」 「あ、枕とタオルケットが押入れに......」 「へいへい」 悪魔は彼をベッドへと寝かせると、押入れを開けてタオルケットと 枕を取り出した。 そして頭を持ち上げて枕をあてがい、タオルケットをかけてやる。 敷布団は弾力があり、フカフカとしていた。 「寝やすいように着替えたほうがよくないか?」 悪魔には、彼の脱いだ姿がみたい......。 という気持ちは正直にあったが、単にカーディガンを着たままで 寝ていることに、不自然さを感じたのも事実だ。 「いいんです、少し休んだら、起きて夕飯を作りますから。 両親が共働きなので、食事と家事は僕がやるって決めてるんです。 あっ、お醤油が切れていたから買いに行こうとしたのに......。 買えなかった、困ったな。夕飯どうしようかな」 彼は窓の外をみつめた。 雨はようやく止みそうな気配を見せていた。
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