朝夕

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 自分の血を見てから、一秒も経たずに、体に痛みが走った。  ちょっと待ってって思うのに、  だめ。  痛い。  喉の奥に異物を感じて、苦しくなって、吐いた。  ゴボっと音がした。  熱い。焼けるように熱い。  背中が熱い。  刺されたのは胸なのに、熱い背中に意識が向いた。 「だから、宇宙人なんだってば」  少年は笑っている。 「ね。ここにはなにもないわけ」  少年は手を上にあげた。  指と、指のあいだに、ほおずきが収まっていた。  鬼灯。  なんだっけ? 食べられるんだっけ? 音が鳴るおもちゃになる植物だっけ?  思い出せない。  オレンジ色の……。 「パプリカ?」 「違う」 「宇宙人だから」 「ほおずきもパプリカに変えられるってんですか?」 「違うよ」 「なにが?」 「だからボクは宇宙人で、君を殺しにきたんだよ」  せめて気絶させて欲しいと僕は願った。  体が、勝手になのか、意識的なのかわからないけど、もがいている。  まるで殺虫剤をかけられたあとのゴキブリのようだと自分を思った。  逃れたいのに、逃れられない。  死ぬのか?
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