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「正人!?」
助けを求めようと隣の正人の部屋に入ってもそこも静かで人の気配はない。
バクバクうるさい心臓を押さえながらここでも遮光カーテンを開ける。
そろりと振り返った私の目に、やはり正人の姿は映ってくれなかった。
汗が滲んで息がし辛い。
膝から崩れて座り込むと、胸を押さえて必死に息をしようと口を開ける。
それなのにうまく息ができなくて苦しさで滲んだ涙で目の前もぼやけた。
「っ……ふっ……」
今、息を吐いているのか吸っているのかもわからない。
「お母さん!?」
両肩を持って体を起こされてその人物に縋り付く。
「……大丈夫だから。ゆっくり息吐いて……」
背中を撫でながら言われて苦しみながらその声を聞いて背中の温もりを感じていると、次第にゆっくり呼吸ができるようになった。
「……お母さん?わかる?」
心配そうに覗き込んできたのは結芽。
「あ……結芽。お化粧なんてして大人ぶっちゃって」
笑っても結芽はキュッと眉を寄せる。
「大丈夫だから早く制服に着替えちゃいなさい。本当に遅刻するわよ」
立ち上がってまだ膝を付いたままの結芽を見下ろすと、結芽も立ち上がったが自分の部屋には入らずそのまま私の後をついて階段を降りた。
「もう、そんなのんびりする時間ないわよ?何、学校行きたくないの?」
聞きつつリビングダイニングに続くドアを開けると、
「おはよー!」
「あ、おはようございます!」
見知らぬ顔を見て私の動きは停止する。
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