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「おはよう」
「うわ、出た」
「山賊みたいに言うなよ」
登校してきた柳田くんは不満そうな口ぶりで自分の席に座った。私はやっぱり振り返ることができない。
昨日の舞子の台詞が頭の中を駆け巡っている。一度それを受け入れてしまえば、もはやそうとしか考えられなくなっていた。ヤバい。これはヤバいよ。
頭の中は沸騰しそうなくらい熱いけれど、頭のどこかに他よりも少しだけ冷静に状況を見極める別の自分もいた。
これがカスタムタイプの真髄だ。今の自分が使い物にならなければ、他の自分を使えばいい。
そのかろうじて平静を保っている私が、ショート寸前の私に言った。
挨拶してくれたのに返さない私も相当ヤバいんじゃない?
「……おはよ」
「おう」
うわ無愛想な感じかっこいい。
唯一冷静だった自分も陥落した。これはもうダメかもしれない。
もっと話したい、と思った。けど私はこれ以上話を続けられない。それは挨拶しただけで息切れしちゃってるからじゃなく。
どんな風に話しかければいいのかわからなかった。どんなテンションで、どんな言葉遣いで、どんな表情で話しかければいいかわからない。
正解がわからなかった。
どのタイプの私なら、彼に気に入ってもらえるんだろう。
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