4.勇気

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 最初、鷹條は朝の彼女だとは気づかなかったのだ。  駅を出て、コンビニで買い物でもしようかと思ったところ、女性が急に何かに足を取られたように転倒した。  しばらく見ていたら、ヒールの踵が溝にはまってしまったようで、女性は一所懸命に抜こうとしている。  周りにいた誰もがチラチラと見ているけれど、助けようとはしないので、やむなく鷹條は声をかけたのだ。  半泣きで潤んだような瞳で見られてやっと朝の彼女だと気づいた。 ──しっかりものに見えるが、少しおっちょこちょいなのだろうか?  どんなふうにはまったものなのか、ヒールは溝にしっかりと挟まっている。軽く引いたくらいでは取ることはできなかった。  その間、足を地面に置かせているのも忍びない気がして、自分の膝に置いてもらおうとしたのだが、スーツが汚れるから、と遠慮していた。  まあそれもそうかと思い直し、地面にハンカチを引いたのだが、その瞬間『痛い!』と声が聞こえたのだ。  確かにこれほどヒールが引っかかって転倒したのでは、捻った可能性も否定はできない。  このまま彼女を放っておくことはできなくて、友人のいる病院まで連れて行った。
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