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幸食鬼に睡眠は必要ない。殆どの幸食鬼は夜に活動している。昼間と違って、夜は人間が眠っていて動き回らないし、『核』が取り出しやすいからだ。もちろん、昼夜が逆転した生活を送っている人間はいるけれど、やっぱり夜のほうが人間の活動量は少ないように感じる。  ユタもミサも、例外ではない。二人とも夜に『核』を食べに出かけていく。  だから、僕たちは昼間に三人で集まってのんびりと過ごすことが多い。だけど、今日は一人になりたかった。 ユタとミサは他愛もない話に夢中になっている。僕は、二人に気づかれないように、そっと小学校を抜け出した。  ——向き合うことと、逃げることは違う  僕の記憶が、ユタの声でその言葉を再生した。僕はどうしても、その言葉を受け止められない。しかも、いつも厳しいことを言わないユタに言われたということが辛かった。   僕は、細い道をトボトボと歩きながら、昔のことを思い出していた。 僕がまだ、『核』を食べるということに何の疑問も持っていなかった頃のことを。
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